立ち止まる知恵もあるはずだ。沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題は、性急に進めるべきではない。
だが、日米両政府はあす、ワシントンで開く外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)で、名護市辺野古に計画する代替滑走路の具体案に決着をつけようとしている。
自公政権時代に決めた滑走路2本の「V字案」のままでいくのか、環境に配慮して埋め立て面積を減らそうと日本側が新たに提案した滑走路1本の「I字案」とするか――。
結論を先送りしてきたが、沖縄の理解を得ぬままの見切り発車で、米国側が推すV字案を成案とする見通しだ。
北沢俊美防衛相から通告された沖縄県の仲井真弘多知事は「絵空事だ」と強く反発している。辞意を表明した菅直人首相の下の閣僚と、今月末で退任するゲーツ国防長官との間で、沖縄との関係を損ねてまで案を決めて何の意味があるのか。
問題解決どころか、さらに事態をこじらせるだけだ。
V字案であれ、I字案であれ、沖縄県と名護市が一致して反対している以上、「辺野古」は事実上無理だ。
米国では、上院の超党派の有力議員が辺野古断念を求める声明を出した。次期国防長官のパネッタ中央情報局(CIA)長官も、米議会で「何が最善で最も費用対効果が高いか見いだす努力をしたい」と答えている。
苦い現実を見据えて、打開策を探る機運は芽生えつつある。
今回の2プラス2では、普天間の移設完了目標2014年の先送りも決める。新たな期限は設けず、「できる限り早い実現を図る」とする方向だ。事態打開のメドが立たない現状ではやむをえない。
現実を直視して、普天間の固定化につながらないよう、日米両政府は態勢を立て直したうえで、真剣に仕切り直しを考えるときだ。
その際に、いかなる検討も沖縄との信頼関係の再構築が大前提になる。
その試金石のひとつになりそうなのが、米海兵隊の新型輸送機オスプレイの普天間配備問題の扱いだ。
開発段階で死亡事故が相次いだオスプレイ配備に対する沖縄県民の反発は強い。日米両政府は騒音など周辺環境への影響をはじめ、沖縄が求める情報の開示に最大限応じる必要がある。
地元の納得を得る努力を尽くすことなく配備を強行すれば、また移設問題の解決に悪影響を与えるだけだ。
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