米軍のアジア関与を支えよ
財政難に苦しむオバマ米政権は国防予算を大きく削ろうとしている。そうしたなか、どうすれば安定の要である米軍をアジアにつなぎとめられるか。日本としても真剣に考えるときにきている。
パネッタ前中央情報局(CIA)長官が新しい米国防長官に就いた。必ずしも国防一筋の専門家ではない同氏が抜てきされたのは、行政管理の能力を買われてのことだ。軍の効率を高め、国防予算の削減を果たすことが大きな使命とされる。
そこで気がかりなのは国防予算を削ろうとするあまり、米軍のアジア関与まで弱まらないかということだ。オバマ大統領は2023会計年度までに国防予算を計4千億ドル(約32兆円)削るのが目標という。
しかし、中国の活発な進出を受けて、南シナ海や東シナ海では海洋権益をめぐる緊張が高まっている。最終的にアジアで安定を保障できるのは米軍をおいてほかにない。
日本や他のアジア諸国はアジアの海や朝鮮半島の安定を保つため、米軍がこれからもアジアに深く関与するよう働きかける必要がある。
むろん、米側に陳情するだけでは十分とはいえまい。米軍のアジア関与が息切れしないよう、日本にもやるべきことがたくさんある。
その一つは自衛隊が大量に持っているP3C哨戒機を使い、周辺海域での米軍による偵察や警戒、情報収集といった活動を肩代わりすることだ。これにより、米軍は他の分野に力を振り向けやすくなる。
すでにある日米豪や日米韓、日米インドといった連携の枠組みを生かすことも一案だ。これらに東南アジアの国々も加えた共同訓練や演習を増やせば、米軍はより軽い負担でアジアでの存在感を高められる。
米予算の削減は、日米の懸案である米軍普天間基地の移設問題にも影を落とす。米議会には現行の移設案の見直し論が出ている。これとセットになっている在沖海兵隊のグアム移転の経費が大きく膨らみかねないためだ。
現行案が白紙になれば、普天間基地の固定化が現実味をおびる。パネッタ氏が米議会の主張に押されないようにするためにも、日本は移設への進展を急がなければならない。
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