オバマ米政権が新たな対テロ国家戦略を発表した。7月にアフガニスタン駐留米軍の撤退を始め、2012年夏までに3万3千人を撤退させる計画だ。米中枢同時テロに端を発した米国の一連の戦争がようやく終幕に向かい始めた。
意図がどうあれ、米軍の開戦自体、駐留自体が住民の反感を買い、次の新たな戦争を準備してしまう。米国の中東での政策にはそんな側面があった。不毛な堂々巡りだ。撤退はそのような無用な犠牲の回避につながると評価したい。
同時に、新戦略にはそうした単なる終戦工作とは異なる、歴史的要素があることにも目を向ける必要がある。
従来、米国の外交戦略は、国によって対応が異なると指摘されてきた。非民主主義的政権の場合、反米政権であればその非を鳴らすが、親米政権なら不問に付す。あまつさえ軍事援助、経済援助さえ与え、独裁政権の延命さえ許す。
古くは南ベトナムしかり、イランのパーレビ国王しかり。いわゆる二重基準だが、いずれも、共産主義の拡大を防ぐため独裁性に目をつぶる、という側面があった。それ自体、正当化できないご都合主義だが、反共主義者の間では一定の説得力があった。
ところがソ連崩壊後、もはやその理屈にも根拠がなくなった。それなのに米国は、いわば惰性で二重基準を続けてきた。
今年の、ジャスミン革命に始まる一連の中東の革命で倒された旧政権は、リビアを除けばいずれも親米独裁だった共通項がある。米国は当初それらの延命を望 む様子だったものの、不正蓄財や弾圧など政権側の反民主主義的性格があらわになるにつれ、渋々、革命を支持する方針に転じた。
米国のこの変化は、冷戦終結に伴ういわば必然的変化だ。二重基準を許す根拠がなくなったのだ。
そうした文脈からみると、今回の新戦略も必然的である。相手国を何が何でも親米的とする、そのためには手段を問わず戦争も辞さない、という路線からの撤退ともいえるからだ。
してみると日本の取るべき道も明らかだ。米国に対しもはや二重基準は許されないと理解させること。民主主義的正当性や人道的観点でのみ相手国を評価せざるを得なくなったと説得することである。新たな歴史的地平に立った、そんな外交を日米両政府に望みたい。
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