Shuttle Retirement — The Results Connect to Next Universe

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まばゆいばかりの閃光(せんこう)とともに巨体がゆっくりと持ち上がったかと思うと、瞬く間にフロリダの空を駆け上っていく。

この光景も見納めだ。

米国のスペースシャトルは、きのう打ち上げられたアトランティスで1981年の初飛行以来30年の歴史に幕を下ろす。

シャトルは初の再使用型宇宙船として、毎週のように宇宙を往復して費用を格段に下げるのがねらいだった。2回の事故がおき、安全性に疑問符がついた。次々に必要になった技術的改修や、経済的な制約から往復は年数回にとどまり、もくろみは外れた。

米国にとっては軍事目的の飛行もたくさんあった。一方、産業への応用で期待された無重量下での新合金や新薬の開発という成果はあまりなかった。

だが、長い活躍を通じて16カ国の355人を軌道へ運んだ。宇宙活動を米ソの独占から世界に広げた意義はとても大きい。

日本からは7人が延べ12回飛行した。身近な先輩が見せてくれた無重量の不思議に夢をふくらませた子どもは多いだろう。

シャトル引退で、世界の宇宙開発は新たな時代を迎える。

米国は、財政難から後継機の開発を断念した。国際宇宙ステーション(ISS)との往復は民間に託す。その実用化には数年かかるとみられる。

ISSとの間を飛行士が往復する手段は当面、ロシアのソユーズ宇宙船だけになる。

補給物資や実験機材の輸送も当面は日本、欧州、ロシアが担う。これからの有人宇宙活動は国際協力なしに進まぬことを、はっきり示している。

日本は、シャトルでの実験に参加して宇宙での活動の幅を広げた。ISSでは最大の実験棟「きぼう」を建設し、大きい荷物の輸送を担当する輸送機「こうの とり」も開発した。ものづくりで、日本の技術力が発揮された。シャトル時代に学んだ技術や国際協力の経験を、さらに次につなげたい。

ISSは今のところ、2020年まで運用される予定だ。日本が学び、作り上げた技術を戦略的に活用したい。アジア諸国と連携するのもいい。存分に活用してこそ、年間400億円を投じる意味が出てくる。

宇宙へ。次は何をめざすか。オバマ大統領は昨年、小惑星や火星をめざす計画を発表した。月面基地を造って、そこから宇宙へ飛び出していこうという構想もある。

具体化はこれからだが、シャトルで学んだ力は人類を前に進めるに違いない。

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