What Will Japan Aim for After the Shuttle?

Edited by Michelle Harris

 

 

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米国のスペースシャトルが、現在飛行中の「アトランティス」を最後にすべて引退する。

1981年の初飛行以来30年間、シャトルは世界の有人宇宙開発を支えてきた。日本は7人の宇宙飛行士を搭乗させ、有人宇宙飛行の技術を米国から学んだ。だが、習得した技術をどう使うのか。シャトル後の日本の宇宙開発の方向が見えない。

シャトルの30年は、宇宙飛行の夢の体現と悲惨な事故の繰り返しであり、コストとの闘いの連続だった。シャトルは人工衛星や宇宙実験室などを低コストで頻繁に宇宙へ運ぶ汎用機として開発されたが、実際には帰還のたびに入念な補修が要り、頻度も思うように増やせなかった。

計14人の飛行士が亡くなった2度の大事故で、長期の飛行中断もあった。総飛行回数は4機で135回。1回当たり平均約10億ドル(約800億円)も費やした。米航空宇宙局(NASA)が狙った低コストの輸送手段とするあては外れた。

ここ数年は国際宇宙ステーションへの人員と物資輸送にほぼ専念した。シャトルがなければ、ステーションは決して実現しなかった。その引退は「一つの時代の終わり」(若田光一宇宙飛行士)を記す。

シャトル引退で米国は宇宙へ人間を運ぶ手段をしばらく失い、ロシアのソユーズに依存する。オバマ政権はシャトル後継機の開発や運用は民間に まかせ、NASAには火星探査という長期の大目標を与えた。中国は単独で有人飛行の実績を重ねている。宇宙開発は多極化、多様化が進み国際協力の枠組みも 変わる。

シャトルと宇宙ステーション計画への参加で学んだ技術と経験を、わが国はどう生かすのか。政府は議論をおざなりにしてきた。

宇宙開発の目的は安全保障、資源探査、防災など幅広い。だが「はやぶさ」のような宇宙探査や、有人飛行など、あれもこれも進める余裕はない。政府の宇宙開発戦略本部が省庁の壁を超えた議論を導くべきだが、その役割を果たしていない。

シャトル引退の節目にあたって、日本が宇宙開発に投資する目的や意義を再確認すべきだ。これからどんな優先順位で取り組んでいくのかをしっかり議論する必要がある。

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