Advance the Political Dialogue on Afghan Peace

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アフガン和平―政治対話を進めよう

 外国軍が撤退したからといって戦闘は終わるわけではない。紛争当事者の間の和解がなければ和平実現はおぼつかない。

 アフガニスタンから米軍を中心とする外国軍の撤退が始まった。2014年末までにアフガン側に治安権限を譲り、部隊の駐留を終える予定だ。

 時を合わせるように、アフガンの反政府武装勢力タリバーンと米国、カルザイ政権との間で細々ながら、和解をめざす政治対話が始まった。

 タリバーンとの政治対話を求める提言をシンクタンクでまとめたピカリング元米国務次官が来日し、松本剛明外相に和解努力への協力を求めた。

 10年越しの戦争は大きな転機に差しかかっている。日本はしっかり対話の進展を見守り、和平実現を後押しすべきだ。

 軍事力によって和平を定着させる試みは挫折した。全土での軍事作戦にもかかわらず、タリバーンは農村部を支配し、国連施設などを自爆攻撃している。

 もはや政治対話を通してしか戦争の出口は見いだせまい。

 和解協議の中で注目されているのは、ドイツの仲介によってタリバーンと米国との間で始まった直接対話だ。昨年末から秘密裏に数回行われたという。

 ドイツは、タリバーン政権崩壊直後の01年12月にボンで支援国会合を開催した。10年後にあたる今年12月に再会合の開催を決めた。タリバーン代表の出席が実現すれば、和平への大きな足がかりになろう。

 カルザイ政権とタリバーンとの間の信頼醸成の取り組みにも期待したい。タリバーン元兵士の社会復帰とともに、双方の指導者間の対話のパイプを太くしていくことが必要だ。

 とはいえ、対話を進展させるのは容易ではない。

 国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン容疑者を殺害した米国はアルカイダとの決別のほか、武力の放棄を求めている。外国軍の早期撤退を求めるタリバーンとの接点を見いだすには粘り強い交渉力と忍耐が求められよう。

 対話の進展のためには国連はもとよりパキスタンやイランなどの協力も欠かせない。

 和解後のアフガン再建を支援することは、日米関係の深化のためにも重要だろう。来年は、日本がアフガン復興支援国際会議を主催して10年になる。

 東日本大震災と政局で日本人の目は内向きになりがちだ。しかし震災時には、貧しいアフガンの人々からも義援金が寄せられた。その親愛の思いと和平への期待にこたえていきたい。

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