Don’t Let North Korea off the Hook

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北朝鮮への包囲網を崩すな

 北朝鮮の金正日総書記が9年ぶりにロシアを訪問し、メドベージェフ大統領と会談した。ロシア大統領府によれば、金総書記は北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議に前提条件なしで復帰し、その際には核兵器やミサイルの実験・製造を凍結する用意があると表明した。

 6カ国協議は2008年末に開いたのを最後に、3年近くも休眠状態が続いている。北朝鮮は一時、協議からの離脱まで宣言したが、最近は一転して、早期再開に強い意欲を示している。国際社会による制裁で経済が疲弊するなか、経済支援を得たいという思惑があるのだろう。

 しかし、米国務省は核実験などの凍結だけでは「不十分」と断じた。当然である。仮に協議を開いても、北朝鮮は自らの思い通りに話し合いが進まなければ、こんどは「凍結」の解除をちらつかせて揺さぶることは十分に想像がつく。

 日米韓は6カ国協議再開の条件として、ウラン濃縮活動の停止、国際原子力機関(IAEA)の査察団の復帰など、核放棄に向けた具体的な行動を北朝鮮側に求めている。北朝鮮が真に協議復帰を望んでいるのなら、まずは行動で示すべきだ。

 ロ朝首脳会談では、ロシアから北朝鮮経由で韓国に通じる天然ガスパイプラインの建設を進めることで合意した。北朝鮮はガスの通過料などの外貨収入が得られるという。北朝鮮の改革・開放を促す構想として評価はできる。だが、南北関係の改善や核問題の解決に向けた進展がない限り、実現は難しいだろう。

 心配なのは、ロシアが北朝鮮との関係改善や影響力拡大を重んじるあまり、安易な譲歩に走ることだ。ロシアは金総書記の訪ロに先立ち、5万トンの食糧支援を始めている。

 中国とロシアはもともと6カ国協議の早期再開に前向きだ。金総書記はロシアからの帰路、中国に立ち寄った。北朝鮮が中ロと、日米韓の分断を画策している可能性もある。

 関係国が北朝鮮と対話を重ねることはもちろん、悪いことではない。忘れてはならないのは、北朝鮮に対して、核放棄に向けた目に見える行動を促すという原則だ。日米韓も中ロも包囲網を崩さず、結束して北東アジアの脅威に対処していきたい。

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