米政府が特許法を大幅に改正することを決めた。140年以上続いた特許の「先発明主義」を改め、日本や欧州と同じ「先願主義」に移行する。特許制度が統一されれば、様々な国際特許紛争が減り、企業も海外事業展開をしやすくなる。米国の法改正を歓迎したい。
先発明主義は先に発明した人に特許を与える制度で、先進国では唯一、米国だけが採用してきた。一方、先願主義は先に特許を出願した人に権利を認める制度で、先進国では共通のルールとなっている。
米国の制度では発明家などが後から権利を主張する場合があり、特許の公開制度もなかったので紛争が絶えなかった。特許期間も以前は出願日からでなく取得後17年としていたため、内容を伏せたまま審査を引き延ばし、技術が普及してから特許を取得して多額の費用を請求する「サブマリン特許」が問題となった。
日本や欧州はこうした米国の制度の問題点を指摘し、1985年から先願主義への移行を求めてきた。だが、出願費用の負担を問題とする米国内の中小企業や、より長い保護期間を求める製薬業界などが反対し、政府の方針も二転三転してきた。
今回の法改正は、制度統一に向けた5年前の日米欧特許当局の合意に基づく。最近のスマートフォン(高機能携帯電話)を巡る特許紛争に見られるように、国際的な知的財産戦略を重視するIT(情報技術)産業などが政府を後押しした形だ。
米国の法改正を踏まえ、これから重要なことは、特許を国際的に相互承認する「世界特許」への流れをどう作っていくかだろう。特許協力条約(PCT)により、自国に出願すれば外国でも認められるようになったが、各国の審査業務にはばらつきがある。特許の新規性や範囲などの判断基準の統一も求められる。
中国が鉄道の特許を出願するなど新興国も知財戦略を重視している。新興国が勝手に特許を認めれば、新たな国際紛争の火種になりかねず、新興国との制度統一も必要だ。
米国の先願主義移行は日本の悲願だった。それが実現したことで、今度は日本の政府や企業も、国際的に通じる知財戦略の立案や特許人材の育成が問われている。
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