国連総会で、中東和平が焦点になっている。いっこうに進まないイスラエルとの交渉にしびれを切らしたパレスチナが、国家として正式に国連に加盟しようとしているからだ。
米国は止めようと必死だ。オバマ米大統領は、パレスチナが申請しても、安全保障理事会で拒否権を使うと明言した。
パレスチナ自治区のヨルダン川西岸では、国連加盟を求める市民のデモが起きている。「アラブの春」による民衆革命の刺激もあり、なぜ自分たちは主権国家として認められないのか、という不満が募っている。
93年にイスラエルと暫定自治で合意してから、自治政府は選挙などで実績をあげてきた。人口は西岸とガザ地区を合計すれば400万人を超える。
一方、交渉を続けてもイスラエルは占領地への入植をやめない。パレスチナの立場は弱くなるばかりという失望は深い。
国連加盟は象徴的な意味だけではない。国際刑事裁判所(ICC)や国連人権理事会にも加盟できる。占領地での不法行為を国際的に糾弾すれば、イスラエルには打撃になるだろう。
ここまで事態をこじらせたのは、仲介役の米国の責任が大きい。昨年9月に和平交渉を再開し、1年以内の和平合意を目指すと確認した。ところが、直後にイスラエルが西岸占領地で入植地の建設を再開した。それを止めることができなかった。
オバマ氏も板挟みだ。
拒否権を使えば、アラブ世界から「二枚舌外交」と反発をかう。しかし来年に大統領選挙を控えているので、米国内に支持者が多いイスラエルに圧力をかけるのも難しい。国内では右派から「テロリストとイスラエルを同等に扱っている」と批判される状態だ。
国連でオバマ氏は「イスラエルの安全保障への米国の関与は揺らぐことはない」と語った。米国が「公正な仲介者」の地位を失うことは、イスラエルの利益にもならないはずだ。
パレスチナが国連加盟を求めることは理解できる。ただ、安全保障理事会は採決を急ぐ必要はない。米国も頭から拒否権を行使するのは控えるべきだ。
国連加盟について、自治政府と統一d政府を目指すイスラム組織ハマスは反対しているという。内部で意見が割れているとすれば、その意思統一の時間も必要だろう。
イスラエルには熟考を求めたい。周囲の民衆に敵視されたままでの安全保障はありえない。「2国家共存」を受け入れる以外に選ぶ道はないはずだ。
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