普天間問題―同盟のために見直そう
外交が国内政治の制約を受けることはままある。だが、ここまでこじれたら、もう動かしようがない。
沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題は、完全に暗礁に乗り上げた。このほど来日したパネッタ米国防長官の日本側担当閣僚との会談が厳しい現実を映し出していた。
一川防衛相との普天間問題の協議で一致できたのは、名護市辺野古沖への移設を約束した日米合意を可能な限り早く進めるという原則だけだった。
防衛相は新滑走路の建設に必要な環境影響評価(アセスメント)の評価書を年内に沖縄県に提出すると米側に伝え、歓迎されたという。
けれど、その先がない。
国内では民主党政権と沖縄との信頼関係は切れたままだ。地元の名護市長は反対だし、県議会も一致して県外・国外移設を求めている。
米政府にも苦しい事情がある。巨額の財政赤字を減らす一案として、普天間移設と連動する在沖縄海兵隊のグアム移転費が取りざたされているのだ。
この予算を守るため、オバマ政権は普天間問題の進展を議会にアピールしたい。「アセス」は、そのための演出といえる。米議会対策のため、日米両政府が日米合意を呪文のように唱えているという図式なのだ。
アジア・太平洋地域はいま、台頭する中国をどのように安定的秩序に組み込むかという重要な課題に直面している。パネッタ長官が東京での記者会見で、「米国はアジアにおけるプレゼンスを維持・強化する」と述べたのは、この点を重視するというメッセージだった。
対中政策でどのような構想を描くのか。日本はどんな役割を果たすのか。中長期的には、日米が最優先で話し合うべき課題のはずだが、普天間問題が入り口をふさいだ格好で、議論に踏み込めない。
この10年間のアフガニスタン情勢で明らかなように、力に頼る米国の戦略は限界にぶつかっている。多極化する世界で、相対的に米国のパワーが小さくなるのは避けられない。一方で、草の根保守のティーパーティーに見られるように、国内政治は内向き志向を強めている。
こういう時だけに、大きな枠組みで日米関係を考えていく努力を、お互いにすべきだ。そのためには、普天間問題を根本的に見直し、辺野古以外の案を模索するしかない。
遠回りに見えても、それ以外に実質的に日米関係を強化する道を開く手立てはない。
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