Japan's Negotiating Stage Spreads As It "Attacks" the TTP

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「攻め」のTPP交渉で日本の舞台広げよ

野田佳彦首相が環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加に踏み出した。日本の経済成長には貿易や投資を通じて海外の活力を取り込む戦略が欠かせない。決断は遅れたが、これから心機一転、新たな通商ルールづくりや国内の農業改革に果敢に挑むべきだ。

 首相は記者会見で「貿易立国として繁栄してきたわが国は、アジア・太平洋の成長力を取り入れていかねばならない」と語った。同時に「世界に誇る医療制度や日本の伝統文化、美しい農村は断固として守り抜く。十分な国民的な議論を経た上で国益の視点に立って結論を得ていく」と強調した。

 民主党内の慎重意見にも配慮した格好だが、個別業界などの利害を超えて大局的な判断を下した意味は大きい。反対論には誤解に基づくものも多く、政府は今後も丁寧に説明していく必要がある。

 これまでの論争は、米国が推進するTPPに日本がどう対応するかという「守り」の視点が目立った。農業や医療の改革に抵抗するTPP反対論の声の大きさに押され、国内への影響は限定的との説明を政府は繰り返してきた。

 TPPの実像は建設中の「家」のようなものである。基礎工事が終わり、ようやく骨組みを築き始めた段階と考えるべきだ。青写真は日本抜きで描かれたが、入居するなら、日本の国益を反映した家を建てなければならない。

 日本が加われば、日本の経済規模はTPP圏の4分の1を占め、米国に次いで2番目に大きい「住人」である。交渉中の協定の細目だけでなく、必要と判断すれば設計変更を求めてもよいはずだ。

 シンガポール、マレーシアなどアジアの交渉国は日本の参加を歓迎している。いまは米国の市場開放要求にアジア側が応える偏った力関係になりがちだからだ。米国とも渡り合いながら、アジア・太平洋の通商ルールづくりを主導していくのが日本の責務である。

 米政府は、12日に始まるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、TPP協定の輪郭を固めようとしている。だが、今後の交渉期限は定まっていない。

 米国では来年秋の大統領選を控え、保護主義的な勢力のオバマ政権への圧力も強まるだろう。世界貿易機関(WTO)交渉は米国の熱意が冷めて迷走状態に陥った。TPPをその二の舞いにしてはならない。今こそ自由貿易を推し進める日本の実行力を示すときだ。

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