The Road Doesn't Open up to Passivity in TPP Diplomacy

<--

野田首相がハワイで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加する方針を表明した。

走り出したからには、首相は国内の反対・慎重派に理解を広げる対応を急がねばならない。

同時に首相には、外交面での強い覚悟を求める。

関税ゼロを原則として、人、モノ、カネすべての移動を自由化しようというTPP交渉は、日本にとって厳しい展開にならざるを得ない。

だからこそ、世界第3位の経済大国、環太平洋地域の主要国として、新しい貿易や経済のルールづくりに、どのように主体的に参画するかを宣言し、その覚悟を説明すべきだ。

オバマ米大統領との会談後、米国側は「首相が『すべての物品及びサービスを交渉のテーブルに載せる』と発言した」と発表した。日本政府は否定しているものの、交渉の原則が「例外なし」であることは、厳然たる事実だ。

今後も交渉の過程で、さまざまな「行き違い」や「衝突」があるだろう。そのたびに、自国に有利な環境づくりのための火花が散る。

米政府によれば、米国とともに北米自由貿易協定(NAFTA)を構成するカナダ、メキシコが交渉参加の考えを伝えてきたという。これなど、日本が両国に影響を与えたとも見える。

TPPには、世界第2位の経済大国になった中国に対抗し、米国主導のルールをつくっていく狙いもある。

日本外交の基軸は「日米」であり、米国との関係強化を起点に外交を立て直すのは順当だ。その意味で、TPPには「対中カード」という側面もある。

しかし、地球規模で経済の相互依存が深まったいま、中国抜きの経済体制はあり得ない。ここは米国一辺倒に陥らずに、中国やアジア各国との関係改善、強化も急ぐ必要がある。

首相はAPECで「アジア太平洋自由貿易圏に主導的役割を果たしたい」と語った。

それならばこそ、日中韓の3国間や、ASEAN(東南アジア諸国連合)+3(日中韓)の自由貿易協定も進めて、成果を上げよう。それらが「対米カード」にもなるはずだ。

これから日本が果たすべき役割は、TPP経済圏と中国とのつなぎ役になることだ。

米中双方に利益をもたらす難しい役だけに、これまでの受け身の外交姿勢を改めて、したたかに米国にも中国にもモノを言わねばならない。

About this publication