米海兵隊豪駐留 大きな変化の始まりだ
2011年11月17日
点と点をつなぎ合わせると線になり、物事の本質が照らし出されることがある。
軍事技術の飛躍的進展に伴い、軍の配置を限定的に捉える論拠が揺らぐ中、アジア・太平洋地域での米軍の最近の動きは、沖縄の基地問題にも波及する変化の前触れとして輪郭を鮮明にしつつある。
オーストラリアを初めて訪問しているオバマ米大統領が米海兵隊員約200~250人を北部に駐留させることを伝えた。豪州への本格駐留はこれまでなかった。
南シナ海で周辺諸国との領有問題で摩擦を生んでいる中国の軍事力増強をけん制する狙いがある。
豪州はジャングル戦闘などの訓練に適しており、米豪両国は将来的に駐留が2500人規模に拡大するとしている。軍事情勢によってはさらに増える可能性もある。
中国軍の弾道ミサイルは射程が延び、巡航ミサイルは米空母を標的に捉える精度があるとされる。その射程に入る沖縄やグアムの基地の脆弱(ぜいじゃく)性を問題視する見方が米軍内で顕在化している。
これに対応するため、兵力配置を分散させ、米軍基地を中国のミサイルの射程外に分散させる「空海戦闘(エア・シー・バトル)構想」がある。豪州駐留がその一環であることは間違いない。
兵力を分散しても、米軍の機能は損なわれないという検証を経た具体的な動きだろう。
米海兵隊は三つの遠征軍を、本国の東西海岸にそれぞれ置き、国外唯一の展開拠点が沖縄である。
地理的優位性を挙げ、沖縄への大規模駐留に固執してきた米軍のアジア・太平洋地域での重心が中国を遠巻きににらむ方向に移りつつある表れといえるだろう。
クリントン米国務長官がアジア外交のあるべき姿を論じた論文で「より地理的に分散し、作戦面で弾力性があり、政治的に持続可能な米国の軍事態勢が必要である」と言及した。
日米安保と沖縄の関係に詳しい米国の研究者から米西海岸に在沖海兵隊を移す「後方展開論」も提起されている。
空海戦闘構想と符節を合わせた見直し論であり、米軍普天間飛行場の県内移設に対し県民が強固に反対する沖縄は、日米安保の中長期的な安定の観点から「持続可能」な状況の対極にある。
在沖海兵隊は軍事的にも政治的にも役割を終えたのではないか。
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