Myanmar, Don’t Retreat from Democracy

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[ミャンマー]民主化を後退させるな

米国のクリントン国務長官がミャンマーを訪問し、テイン・セイン大統領や民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんとそれぞれ会談した。米国の国務長官が同国入りするのは約57年ぶりだ。

 ミャンマー政府は、今年3月の「民政移管」以降、政治犯の一部釈放やスー・チーさんとの対話など、民主化に向けた動きをみせた。こうした情勢の変化が、歴史的訪問につながった。

 世界的な注目を集める2人の女性リーダーが、両手を取り合い、抱擁する光景は印象的だ。

 クリントン長官は大統領との会談後の記者会見で、ミャンマー政府が進める改革への支持を表明した。同時に、今も獄中に残る政治犯の即時無条件釈放や、少数民族武装勢力との和解などを求めた。前向きな改革が続けば、外交関係を大使レベルに格上げすることを検討する考えも示した。

 1988年の民主化要求運動弾圧以降、米国はミャンマーの軍事政権支配を批判し、経済制裁などの強攻策を一貫して取ってきた。

 今回の訪問で、両国は関係改善に向け大きな一歩を踏み出した。2国間関係にとどまらず、孤立を深めていたミャンマーが、国際社会へ復帰する足掛かりにもなる。

 ただし、民主化は始まったばかりだ。米国が制裁解除に慎重なのも、改革の「本気度」を見極めようとしているからだろう。国際社会は、ミャンマーとの対話を重ねながら民主化路線が後戻りしないよう注視し、支えていく必要がある。

 米国とミャンマーが関係改善にかじを切った背景には、双方の思惑も透けて見える。

 オバマ米大統領は、アジア太平洋地域における米国の存在感と任務の拡大を最優先事項とする新戦略を打ち出した。台頭する中国をにらみ、同地域で今後の秩序形成を主導する役割を果たしたい。こう考える米国が、民主化を促しつつミャンマーへの関与を深めたい意向がうかがえる。

 一方のミャンマーは、米国などから経済制裁が科されてきたため、代わりに中国との結び付きを深めた。ただ、経済成長が進む近隣国に比べ、発展が遅れた。米国に接近した背景には、中国一辺倒を改めたい外交戦略も見える。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)は、ミャンマーを2014年の議長国に決めた。ミャンマーは中国とインドの間という地理的に重要な位置にあり、天然資源も豊富だ。同国を取り巻く国際情勢が大きく変わろうとしている。

 日本はどう向き合うのか。

 野田佳彦首相は11月、長年凍結していた政府開発援助(ODA)再開の方針をテイン・セイン大統領に伝えた。今月下旬には玄葉光一郎外相が訪問を予定している。

 ただ、過去の日本の援助に対し、スー・チーさんは「国民との関係よりも政府との関係を重視しているように見える」と批判的だった。

 ODA再開に当たっては、軍事政権による弾圧で疲弊した国民の生活向上につながり、同時に民主化を後押しするものでなければならない。

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