巨額の財政赤字にあえぐなか、単独で「世界の警察」を任じることは難しい。オバマ米政権が公表した新国防戦略は、米国のこんな現実を印象づけた。米軍のアジア関与を息切れさせないためにも、日本の一層の貢献が必要だ。
オバマ大統領は財政難を乗り切るため、国防予算にも大なたを振るおうとしている。今回の新戦略は予算を削りつつ、必要な戦力をどうやって保っていくのか考えた末の窮余の策だ。
新戦略によると、米軍は地上戦力を中心に規模を縮小する。これに伴い、2つの地域の紛争に備える「二正面作戦」は事実上、放棄せざるを得なくなる。
これ自体はさほど、目新しい決定ではない。二正面作戦は朝鮮半島や中東で紛争が起きたとき、同時に対処できるようにするためのものだった。
しかし、米国はブッシュ前政権当時からこの作戦が限界にきているとの見方を示していた。オバマ政権も2010年に見直しの方針を打ち出している。米国の深刻な財政事情を考えれば、やむを得ない決定といえる。
気がかりなのは世界の成長センターであるアジア太平洋への影響だ。アジア太平洋では、米軍の存在こそが安定の要だ。米軍の関与が弱まれば、地域の安定が損なわれかねない。
新戦略では中国の台頭が米国の安全保障を脅かしかねないとして、アジア太平洋に戦力を重点配備する路線を確認した。アジアへの関与を強める決意の表れとして、歓迎したい。
だが、いくらオバマ政権がそうした決意を抱いていたとしても、その通りに実行できるかどうかは別問題だ。仮に、米国が国防予算の追加削減を迫られる事態になれば、もはやアジア太平洋を例外扱いできない可能性もある。
いま肝心なのは米国の同盟国である日本や韓国、オーストラリアなどが、米軍のアジア関与を支えるため、これまで以上に積極的に貢献していくことだ。
日本も厳しい財政事情を抱えている。それでもできることはたくさんある。日本の南西諸島は対中戦略上、重要な場所にある。これらの防衛強化はアジアの安全保障にも重要な貢献になるはずだ。自衛隊はP3C哨戒機を大量に保有している。これらを活用し、米軍による周辺海域の監視活動などを肩代わりすることも可能だろう。
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