New US Defense Strategy for Asian Stability

<--

社説:米国防新戦略 アジア安定のために

国防費削減に対応すべく米オバマ政権が新たな戦略を打ち出した。アジア太平

洋地域で軍事的な存在感を強める一方、伝統的な「二正面作戦」は正式に放棄す

るという。財政難に対処しつつ、中国の膨張路線にも何とか歯止めをかけたいオ

バマ政権の苦しみが伝わってくるが、まずは現実的な対応として評価したい。

二つの紛争に同時に対処する「二正面作戦」はオバマ政権になる前から見直し

の動きが出ていた。米国防総省が一昨年、「4年ごとの国防政策の見直し」(Q

DR)を公表した際、当時のゲーツ国防長官は「二正面作戦」を時代遅れと断じ

ている。

新国防戦略の中でも、「第二の地域」で敵を抑止する考えが示されたが、実質

的には「二正面作戦」の放棄である。特に中国やイランへの対応が新戦略の焦点

になったのは時代の流れだろう。ただ、作戦変更によって紛争への備えが手薄に

ならぬよう要望しておきたい。

今回、国防総省に出向いて演説したオバマ大統領は、01年の同時テロから続

いた国防費の増大を「異常なペース」と形容し、今後10年の国防費の伸びは緩

やかになるだろうと語った。米国の国防費は今後10年で約4900億ドルも削

減される。無い袖は振れないから、地上戦力を中心に米軍の規模を縮小し、アジ

ア太平洋地域に重点を置こうというのだ。

昨年11月、オバマ大統領はオーストラリア北部に最大2500人規模の海兵

隊を駐留させることで豪側と合意し、アジア太平洋地域を米国の安全保障政策の

最優先に位置付けると表明した。空母建造やミサイル増強を続ける中国に対し、

海軍と空軍の連携戦闘構想も打ち出した。無人機や巡航ミサイルなどを動員し、

遠方から中国軍をたたく戦略だ。

米国が中国のサイバー攻撃を警戒していることも含めて、米中対立の構図は強

まっている。イラクから軍を撤退させ、アフガニスタンでの戦闘にも早く幕を引

きたい米国が、経済的にも大事なアジア太平洋地域に重点を移すのは、特に不思

議ではない。かといって米ソの冷戦を思わせるような米中対立に至っては困る。米軍の存在によって中国などが近隣諸国と協調し、朝鮮半島情勢にも好影響が及

ぶよう期待したい。

だが、オバマ大統領が言うように、米国はイラクやアフガンで得点を挙げ「祖

国の防衛に成功した」のかどうか。自分が米軍の最高司令官である限り、過去の

過ちは繰り返さないという大統領の決意は歓迎したいが、米国には保守層を中心

に米軍縮小を危ぶむ声も強い。オバマ大統領は、新戦略を再選に向けた人気取り

に終わらせず、世界にとっても意義深い転換点にしてほしい。

About this publication