The Iranian Nuclear Issue

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イラン核問題:中露、米欧「圧力」と一線 イラン・シリアとの対話主張 原油禁輸、中国はメリット皮算用も

 【北京・工藤哲、モスクワ田中洋之、ニューデリー杉尾直哉】核開発を進めるイランからの原油輸入を禁止する米欧諸国の動きに中国やロシアが「建設的ではない」などと批判の声を上げている。反体制派弾圧を続けるアサド・シリア大統領の退陣を求める国連安保理決議案にも両国は消極的で、欧米と一線を画する姿勢を取っており、イラン、シリアを巡り、圧力強化を図る米欧と、外交解決を主張する中露が対立する構図が浮き彫りになっている。

 中国国営新華社通信は26日、欧州連合(EU)の禁輸決定について「圧力や制裁は建設的でない。中国は対話による解決を求めてきた」と不快感を表明する外務省報道担当者の発言を英語版で伝えた。中国はイラン産原油の最大の輸出先で、輸出の22%が中国向け。米欧の禁輸を批判するのは、原油供給源との関係悪化を望んでいないためだ。

 だが、今夏に欧州などの禁輸が全面発動されれば、イランとの力関係で立場を強める中国は購入価格を引き下げることができ、原油を安く買い取れるとの見方も出ている。米欧批判を展開しつつ、自国にとってのメリットを皮算用している可能性もある。

 同時に中国はイラン以外の産油国との関係強化に努め、経済成長に不可欠な原油の安定確保に努めている。温家宝首相は今月14~19日にサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールを相次いで訪問、不測の事態に備えた。

 中国に次ぐ原油輸入国のインドも制裁に反対だ。原油の12%をイランからの輸入に頼り、「イラン産原油なしでは難しい」(マタイ外務次官)。レディ石油天然ガス相は制裁でイラン産原油の価格が下がる可能性があることから「状況は好ましい」と語った。

 原発建設支援などを通じてイランと関係が深いロシアの外務省はEUの禁輸措置について「圧力でイランが譲歩に応じることはない」と批判、イランの核問題解決に向けた国際社会の政治・外交的な努力が挫折しかねないとして、イランとの対話を継続する必要性を強調している。

 一方、欧米が検討している対シリア制裁についてロシアのリャプコフ外務次官は26日、「(カダフィ政権を崩壊に導いた)リビアのシナリオを繰り返そうとしている。断じて容認できない」と批判した。ロシアはソ連時代からシリアと友好関係を維持しており、対外武器輸出の約7%をシリアが占める。

 ロシア紙コメルサントは24日、ロシアが軍用練習機「ヤク130」36機を約5億5000万ドルでシリアに売却する新たな契約を結んだと報じた。欧米側の懸念にロシア側は「シリアへの武器供給を禁止する国際的な制裁は存在しない」と正当化している。今月上旬には露海軍の空母艦隊がシリア西部のタルトスに寄港し、存在感を誇示した。

 ロシアは昨年10月、対シリア制裁警告決議案を中国とともに拒否権で阻止。ロシアは独自の対シリア決議案を提出したが、対シリア武力行使に道を開く決議案には拒否権を行使する構えだ。

毎日新聞 2012年1月28日 東京朝刊

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