Why American Elections Are Held on Tuesdays

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余録:米国の選挙が火曜日に行われるのは…

 米国の選挙が火曜日に行われるのは、多くの有権者にとって投票所まで1日がかりの旅が必要だった開拓時代の伝統だと聞く。つまり安息日である日曜から1日置いて、火曜を投票日としたそうだ。それが今も続くのなら、伝統の力はすごい▲以前の小欄で英語の「チューズデー」は北欧神話の戦いの神チュールに由来することに触れた。つけ加えればチュールは部族の集会である民会と正義の神でもある。なかには火曜を民会の日としたゲルマンの部族もあったそうで、いわばこちらの伝統も受け継がれた▲今年11月6日の火曜に行われる米大統領選挙の共和党候補選びのヤマ場となった今週のスーパーチューズデーだ。笑ったのは指名レースの先頭を走ってきたロムニー氏だった。住民構成が全米の縮図といわれる注目のオハイオ州はじめ6州を制してその優位を固めた▲とはいえ3州を制したサントラム氏はじめ他候補もここで引く気配はない。この間、政策論争よりも中傷合戦が過熱し、ブッシュ元大統領の妻バーバラさんも「私が見た最悪のキャンペーン」と評した指名争いである。戦いの神に魅入られた人々の争闘はなおも続く▲激しい争いが人目を集めるのは世の常で、そこに水を差したいオバマ大統領も黙っていない。あえてスーパーチューズデーに会見を行い、イラン情勢での弱腰外交批判を繰り広げる各候補を無責任な好戦主義者に見立ててこき下ろした。こちらのチュール神も健在だ▲あと何カ月か不毛なののしり合いを聞かされる有権者もいやはや大変である。ここは民会と正義の神の顔も立ててフェアな政策論争はできないのか。

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