Will the US-North Korean Agreement Stop the North’s Nuclear Development?

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一歩前進かもしれないが、手放しではとても歓迎できない。米国と北朝鮮が発表した核問題をめぐる合意である。

北朝鮮は寧辺でのウラン濃縮活動を一時停止し、国際原子力機関(IAEA)による監視を受け入れる。核実験や長距離弾道ミサイルの発射も凍結するという。

北朝鮮では故金正日総書記の三男、金正恩氏を中心とする体制が始動したばかりだ。その新体制が早々に核問題の協議に応じる姿勢を示したことは評価できる。

だが、今回の米朝合意にはさまざまな懸念が残る。まず、北朝鮮は合意に基づく核開発の凍結期間について「実のある会談が続く間」と限定している。この解釈では、いつでも核活動を再開できることになってしまう。

しかも北朝鮮には、寧辺以外にも複数のウラン濃縮施設があるとされる。合意では寧辺以外は査察の対象ではなく、抽出済みのプルトニウムを使った核開発の扱いも明確ではない。抜け穴だらけの合意と言わざるを得ない。

核カードをちらつかせ、海外から最大限の支援を得ようとする。こうした北朝鮮の瀬戸際外交に、国際社会はこれまで何度も振り回されてきた。その間、北朝鮮の非核化は進まず、逆に核開発はどんどん加速している。もはや同じてつを踏むわけにはいかない。

米国は見返りに食糧支援に向けた最終調整に入る。栄養食品はともかく、新体制の求心力を高めるために利用されかねない穀物支援は慎重に判断すべきだ。

寧辺のウラン濃縮活動も「一時停止」ではなく、再稼働を封じる措置が必要だ。IAEAによる自由な査察も求めるべきだ。

国防予算の削減を強いられるなか、米国は朝鮮半島で深刻な危機を抱え込みたくないのが本音だろう。緊迫するイラン情勢や中国軍の増強にも対応しなければならない。11月には大統領選も控える。

北朝鮮はこうした米側の足元を見透かし、少ない譲歩で報酬を手に入れようとしている。日本と韓国はこれまで以上に米国と連携し、北朝鮮が支援をただ取りしないようにしてほしい。日米の協力は日本人拉致問題を進展させるうえでも欠かせない。

北朝鮮には中国が大きな影響力を持つ。6カ国協議の議長国でもある中国の協力も取り付けながら、今回の合意を今度こそ真の非核化につなげてもらいたい。

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