長距離弾道ミサイルの発射実験とみられる北朝鮮の「衛星」打ち上げ予告に対し、田中直紀防衛相はミサイル防衛で迎撃措置をとる方針が27日の関係閣僚会議で確認されたことを受け、自衛隊に準備命令を発した。30日には安全保障会議を経て自衛隊法に基づく破壊措置命令が出される。
日本の領土・領海に部品などが落下するなど不測の事態が起きる可能性がある以上、迎撃態勢を敷いて国民の生命・安全を守るのは国家として当然の措置である。
迎撃には、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)や海上配備型迎撃ミサイル(SM3)搭載のイージス艦を沖縄県などに展開するなど大がかりな作業が必要だ。万全の態勢で臨むべきだ。
注目されるのは、航空自衛隊の要である航空総隊司令部が26日に米軍横田基地に移転し、ミサイル防衛拠点となる共同統合運用調整所が新設されたことだ。今回は初めてその真価が問われる。
ミサイル防衛では米早期警戒衛星の情報が極めて重要だ。調整所では、これを空自のレーダー、空中警戒管制機などの情報とともに日米で共有する。共同防衛に日本の平和と存続がかかっている。
平成21年4月に北がミサイルを発射した際、空自の判断ミスに米国の早期警戒衛星も発射を探知したという誤った情報が加わり、混乱した。統合運用により、情報錯綜(さくそう)を避けることも期待される。
統合運用の開始は、米国向けミサイルの迎撃は「集団的自衛権行使にあたるのでできない」といった議論が現実から乖離(かいり)していることをより強く印象づける。集団的自衛権の行使を速やかに容認すべきである。
不安になるのは、破壊措置命令など迎撃措置の指揮を執る田中防衛相が、防衛政策の知識や理解不足のために国会で追及され、説明に行き詰まったり、答弁修正を繰り返したりしていることだ。
26日の参院予算委員会でも、中東・ゴラン高原での自衛隊の国連平和維持活動(PKO)に関し、部隊の撤収計画を自分で読まずに「表紙については報告を受けた」などと無責任な答弁をした揚げ句、陳謝した。
派遣した隊員の生命や安全に責任を負う自覚に欠けている。このような人物にいまだに日本の守りの指揮を委ねている野田佳彦政権には失望せざるを得ない。
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