Choosing the World Bank President: Time to Change the “American Reserved Seat”

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世界銀行の次期総裁選びが、かつてなく熱い。1945年の設立以来、米国人が独占してきたポストに、今回は米国外からも2人が出馬し、初の本格レースとなっているのだ。

米ワシントンに本部がある世銀は、融資などを通じて貧困国の経済発展を支援する国際金融機関である。日 本を含め187カ国が加盟する。ところが歴代総裁は11人全員が米国人。ワシントンにあるもう一つの国際金融機関、国際通貨基金(IMF)のトップは欧州 から、世銀は米国から、との慣例が続いている。出資比率に基づく投票権で、米欧が圧倒的影響力を持つためだ。

しかし、世界経済の舞台で新興国や途上国の発言力が強まるにつれ、こうした“指定席”扱いはおかしい、との声が途上国のみならず先進国内からも強まってきた。当然だろう。透明な方法により人物本位の選出がなされるべき時に来ている。

今回、米政権が推すジム・ヨン・キム氏は韓国系米国人の医学博士だ。米ダートマス大学長を務め、世界保健機関(WHO)でエイズ対策部門を統括した経験もある。

これまで世銀総裁は政権や金融界出身の実力者が目立ち、オバマ大統領としてはアジア系の医学博士という異例の人選により、新しい総裁像を示そうとしたのかもしれない。

ただ、他の2候補が経済の専門家で財務相経験者であるのに対し、キム氏は開発政策や政治交渉の手腕が未知数だ。著書で経済成長に否定的とも受け取られる指摘をしていることから、世銀総裁としての資質を疑問視する声もあるようだ。

一方、途上国を中心に支持を集めているのが、女性でナイジェリア財務相のヌゴジ・オコンジョイウェアラ氏である。世銀で総裁に次ぐ専務理事を務め、先進国相手に自国の債務軽減交渉を仕切った経験も評価の背景になっている。

有力な対抗馬が現れたことからも、「世銀総裁は自動的に米国人」との発想を捨てる転換点にあるのではないか。候補者の実績に加え、どのような考えでこの組織を指揮していく方針なのか、理事会には今月下旬の選定まで精査してもらいたい。

そこで問題なのが米国に次ぐ2番目の投票権を持つ日本政府の姿勢だ。1日にキム氏と会談した安住淳財務 相は立候補締め切りからわずか1週間余りで同氏支持を表明した。韓国系であることとエイズ対策での実績を挙げているが、説得力が乏しい。これでは、安易な 米国追随と見られても仕方ないだろう。世界が注目する人事だ。どのような材料をもとに、どういった基準でキム氏支持を固めたのか、説明する義務と責任が日 本政府にはある。

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