The Fight Against Focusing Inward During the American Presidential Race

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米大統領選の野党・共和党の候補者が、ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事に固まった。民主党のバラク・オバマ大統領と争う11月の本選では、景気回復と雇用の改善が最大の争点だが、米国に内向き傾向が強いのは気がかりだ。

共和党の候補者選びで目についたのが、財政面での「小さな政府」の主張や、宗教的な価値観を強め、穏健派との亀裂を深めた保守派の姿だ。

イラクとアフガニスタンの二つの戦争を戦う一方、景気低迷が生活を直撃する。

その息苦しさが、政府のお金で経済の立て直しを目指す「大きな政府」路線のオバマ氏への反発となり、2年前の中間選挙では、財政削減や減税を求める保守草の根運動

「ティーパーティー(茶会)」が大きな影響力をふるった。

今回、保守の訴えは大きな流れにはならなかった。

ロムニー氏は、茶会や宗教的価値を重んじるキリスト教福音派といった保守派に嫌われた。

州知事時代の医療保険制度改革が、オバマ政権の手本になったと批判を浴びた。妊娠中絶や同性婚を容認した過去や、保守派から異端視されるモルモン教徒であることも響いた。

保守派の受け皿になったのが、候補者選びが始まる前は支持率が低かったリック・サントラム元上院議員だ。

「家族の価値」を前面に出したサントラム氏は、宗教的な保守に支持されて善戦し、2位につけた。だが、財政的にはロムニー氏も「小さな政府」を主張しており、茶会などには温度差があった。支持の広がりには限界があり、撤退を決めた。

ロムニー氏は今後、保守派との亀裂を修復し、その支持を束ねられるかが、かぎになる。だが、保守派に配慮して主張を先鋭化させれば、穏健派や無党派層が離れる恐れもある。

オバマ氏も盤石ではない。財政赤字に苦しみ、失業率は依然高い。ガソリン代の値上がりも不安材料だ。

米国では昨秋、貧富の格差を批判する「ウォール街占拠運動」が盛り上がった。オバマ氏は富裕層増税を訴えて争点を明確にしようとしているが、もう一度、未来への可能性を感じさせることができるか。

ともに弱みを抱えた2人の争いだが、目を向けるべきは国内だけではない。

欧州危機や中東民主化など、世界は激動している。国際社会に大きな影響を与える国としての責任を示せる資質が、米国の指導者には求められる。

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