米大統領選 経済再生への戦略を競い合え(4月13日付・読売社説)
11月投票の米大統領選は、再選を目指す民主党のオバマ大統領に、共和党のロムニー前マサチューセッツ州知事が挑むことが確実になった。
2番手につけていたサントラム元上院議員が予備選からの撤退を表明し、トップのロムニー氏が候補指名を獲得する見通しとなったためだ。ロムニー氏にとって党内をまとめることが急務である。
これから本格化するオバマ対ロムニーの戦いで、焦点となるのは、米国経済の再生戦略だ。
景気は回復してきたが、先行きはなお不透明である。巨額の財政赤字を削減する財政健全化策は、議会で合意のめどが立っていない。厳しい現実を踏まえた政策論争を展開してもらいたい。
オバマ大統領は、当面の景気刺激策と中長期的な財政再建の両立を目指している。
公共事業や教育への投資などで雇用情勢を好転させ、社会保障や医療保険制度の維持・拡充を図る。その一方で、富裕層への増税や国防費削減を打ち出した。
だが、下院を共和党が支配する現状で、政策を実現する展望は開けていない。
ロムニー氏は投資会社経営に成功した裕福な実業家だ。経済に明るい点が強みで、「現実の経済がどう動くかを知る大統領が必要だ」と、オバマ氏を批判する。
ロムニー氏は「小さな政府」路線を掲げる。社会保障など政府歳出は削減し、規制緩和による民間活力を通じて景気浮揚を図る方針だ。企業減税や所得税減税を唱え、国防費は削減しないという。
しかし、増税に反対し税収が減る中で、財源はあいまいだ。
米国経済が持ち直すかどうかは世界経済に大きく影響する。懸念されるのは、イラン情勢に端を発したガソリン価格の高騰だ。欧州経済危機や、最大の貿易相手国・中国との関係も景気を左右する変数だろう。
外交・安全保障政策は、経済政策と密接に絡んでくる。
特に中国を巡っては、ロムニー氏が、「就任したら、国際ルールに従おうとしない中国を、為替操作国に指定する」と、早くも強硬論を主張している。
弱腰と批判されないよう、大統領も、中国の不公正な貿易を取り締まる新機関を設けるとした。
米中関係の緊張は、国際政治に大きな影響を及ぼす。北朝鮮やイランへの対応で、米中両国の役割は今後、一層重要になる。
そんな観点からも、2人の論戦の行方には、目が離せない。
(2012年4月13日01時13分 読売新聞)
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