Facebook’s Stock Listing and the Path to New Industry Creation

<--

フェイスブック上場と新産業創出の道筋

交流サイト(SNS)最大手の米フェイスブックが週内にもナスダック市場に上場する。

利用者は世界で9億人を突破し、知名度は抜群。弱冠28歳の創業者、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者は映画スターのような人気で、投資家広報に訪れた米国の各都市では一目姿を見ようと、ファンが押し寄せたという。

上場時の株式時価総額は1000億ドルを突破する可能性もあり、米グーグルを抜いてインターネット関連企業として史上最大の上場案件になるのは確実だ。

日本でも「新たな産業、新たな企業の創出が課題」と長年言われながら、なかなか果たせない。

近々予想される大型上場案件の顔ぶれも、日本航空や西武ホールディングスなど「昔の名門」の復活劇が目立つ。フェイスブックのような大型新人を生み出し続ける米国と日本の違いは何だろう。

一つは新奇なものをいたずらに排除せず、懐深く受け入れる社会の厚みではないか。ベンチャー企業はそもそも未熟な存在であり、また従来にないサービスや技術に挑戦することから失敗も多く、行き過ぎもある。

フェイスブックの場合も、出発点は女子学生の美人コンテストといういささか問題の多いサービスだった。近年も個人情報の管理をめぐって、米当局の調査対象になったこともある。

だが、誤りを是正すれば、企業として命脈が断たれることはない。新人の失敗に寛容な米国の社会風土が、有力ベンチャー企業が次々に台頭する背景にある。

二つ目は豊富な投資資金だ。日本の昨年のベンチャーキャピタルの総投資額は294億円だったが、フェイスブックは1社で昨年1月に15億ドル(1200億円)を調達した。新企業に流れ込むカネの厚みに歴然とした差がある。

そして最後に人材の流動性。成長する企業には優秀な人材が集まり、それが成長を加速する。フェイスブックも例外ではなく、ザッカーバーグ氏の片腕の最高執行責任者は米財務長官の元首席補佐官という異色の経歴の持ち主だ。

市場はときに過熱し、熱狂がバブルを生む恐れもある。フェイスブックの成長が今後も続くのか不確定要素も残る。だが、先進国経済が足踏みする中で、それを突破する有力な道筋が新企業や新産業の創出だ。フェイスブックの軌跡は日本にとっても示唆に富む。

About this publication