島サミット 米と連携し中国進出に対処を(5月27日付・読売社説)
太平洋上に散在する島(とう)嶼(しょ)国の発展を支えることが地域の安定につながろう。存在感を高める中国を念頭に、米国との連携強化も欠かせない。
パラオなど13の島嶼国・地域の首脳らが参加し、沖縄県名護市で開かれた太平洋・島サミットは、全日程を終えて閉幕した。
議長を務めた野田首相は記者会見で、「日本も島嶼国も自然災害に脆弱(ぜいじゃく)だ。日本の経験を共有したい」として、今回採択された首脳宣言で防災対策を柱に据えたことの意義を強調した。
日本は宣言の中で、島嶼国に対し、津波や地震の発生に備えるための「災害早期警報システム」の整備を支援するほか、世界銀行との協力で「自然災害リスク保険」を創設することを約束した。
首相は「財政は厳しいが、内向きにならず、世界の繁栄、安定に貢献していく」と、今後3年間に最大5億ドル(約400億円)の支援を行う方針を表明した。前回と同等の規模の額である。
島サミットは日本の主導で1997年以来3年ごとに開かれ、6回目だ。政府が島嶼国への支援を続け、信頼を醸成してきたことは貴重な外交資産だ。
今回、島嶼国首脳と日本の企業経営者ら経済界との会合が実現した。民間投資の促進が狙いだ。政府は民間と協調し、きめ細かな援助外交を進めるべきである。
島サミットでは、海洋を巡る環境保護や資源開発などの問題も議題に取り上げられた。
島嶼国に対しては、中国が積極的な援助外交を繰り広げている。支援総額では日本を追い抜き、豪州や米国に続く第3位になったと見られる。
特に、鉱物資源などが豊富なパプアニューギニアやフィジーへの援助の急増ぶりが目立つ。
今回の島サミットに欠席したフィジーの場合、欧米との関係が悪化していることからも、対中傾斜をさらに深める可能性がある。
こうした国々には、中国から温家宝首相や習近平国家副主席ら要人が毎年のように足を運んでいる。海軍艦船の寄港や軍事的支援だけでなく、移民も増えているという。戦略性がうかがえる。
今回、初めて米国が島サミットに参加した。アジア太平洋重視を打ち出したオバマ政権は中国への警戒感を強め、島嶼国との関係構築に乗り出している。
政府は米国のほか、島サミットに参加している豪州やニュージーランドと共に、太平洋地域の安定的発展に努めてもらいたい。
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