政府が、沖縄・米軍普天間飛行場への垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備に向けて動き出した。
防衛省は、沖縄配備の前に米軍岩国基地(山口県岩国市)で10日間から2週間、試験飛行する計画を岩国市長と山口県知事に伝え、協力を要請した。7月の試験飛行を経て8月に普天間に移動させるという。
MV22オスプレイは、4月にモロッコで、海兵隊員2人が死亡、2人が重傷を負う墜落事故を起こしたばかりだ。沖縄は普天間への配備に強い懸念を表明している。配備の強行は許されない。沖縄の理解を得て計画を進めるべきである。
オスプレイは、開発段階で4件の墜落事故を起こして安全性が問題視された機種だ。実戦配備後も、10年4月にアフガニスタンで空軍のCV22オスプレイが墜落している。
田中直紀前防衛相は、モロッコでの事故を受けて、配備前にその原因を公表すると約束していた。ところ が、森本敏防衛相は「(事故)調査報告と配備のタイミングの相関関係は決まっていない」と、原因究明前の配備の可能性に言及した。事実上の方針転換であ る。これでは沖縄の理解が得られるとは思えない。
米側は先週、事故は機体の不具合ではないと日本政府に連絡してきたが、事故原因を特定する内容ではなかった。墜落の詳細な調査は今年末ごろまでかかるという。
オスプレイ配備は日米間の事前協議事項ではないというのが両政府の立場だ。しかし、安全性にかかわる問題となれば話は別だろう。04年8月には、普 天間飛行場所属の大型輸送ヘリが同飛行場に近接する沖縄国際大学に墜落し炎上する事故があった。普天間周辺住民のみならず、沖縄県民の事故に対する危機 感、騒音など生活被害への懸念は強い。森本防衛相の発言は沖縄への配慮を欠いたものと言わざるを得ない。
オスプレイは当初、沖縄の反発を和らげるため、岩国基地に一時駐機した後、普天間に配備する予定だった。しかし、山口県の反対で那覇軍港への直接搬入にいったん変更し、今度は那覇市長と市議会の反対によって岩国基地経由案に舞い戻るという経緯をたどった。
岩国基地から空路で普天間飛行場に移動すれば、配備反対派とのトラブルを避けられるという考えなのかもしれない。しかし、トラブル回避と安全性などの理解を得ることとは別問題である。
普天間への配備で沖縄との関係がこじれれば、最大の懸案である普天間移設問題に影響するのは必至だ。配備の強行は、森本防衛相が「職を賭して努力する」と語った移設問題解決の障害になりかねないことを深く自覚すべきである。
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