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Posted on August 4, 2012.
米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機が米軍岩国基地(山口県岩国市)に搬入された。米政府は、今秋の普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)への本格配備に先立ち、岩国で地上整備や試験飛行をする計画で、野田政権は容認する姿勢だ。
オスプレイは安全性への懸念が根強い。山口県の二井関成知事は「スケジュールありきの搬入で怒りを覚える」と反発し、沖縄県の仲井真弘多知事は「大きな懸念を抱いている中、配備計画を進めるのは誠に遺憾」と批判した。
反対の声は両県だけでなく、全国に広がっている。沖縄から奄美・トカラに至るルートをはじめ、九州、四国、本州各地で低空飛行訓練が計画されているからだ。全国知事会議は先週、配備や訓練に反対する緊急決議を採択した。
こうした反対を無視して、搬入が強行されたことは許し難い。米政府と、米側に「もの言えぬ」日本政府に強く抗議したい。
日米両政府は、今年モロッコと米フロリダ州で計9人が死傷した墜落事故2件の米側調査と日本側の検証で安全性が確認されるまで、日本で飛行はしないことを決めた。これを厳守する必要がある。
大事なのは、科学的で中身のある調査と検証だ。スケジュールに合わせた「儀式」にすることは許されない。
最近になって、米国防総省系研究所の専門家が、以前から乱気流の影響による墜落の危険性を警告していたことが明らかになった。調査・検証は、こうした指摘にも答えるものであるべきだ。
オスプレイ配備の可否は、国民に安全性に疑念を抱かせない説明ができるかにかかっている。
野田佳彦首相は「配備は米政府の方針で、どうしろ、こうしろという話ではない」と語った。配備されるのが「世界一危険な基地」とされる普天間であることを考えると、米国の計画を無批判に容認するのは国民の安全を守る最高責任者として鈍感すぎる。
身内の前原誠司民主党政調会長でさえ「民意を少し軽く考えすぎているのではないか。見通しが甘いと言わざるを得ない」と批判したのは当然だ。
米政府が沖縄配備を急ぐのは、アジア周辺海域で軍備を強化する中国に対処する狙いがある。日本の安全保障の利益にもなると、政府は考えているのだろう。
しかし、日本国民の不信を置き去りにした配備強行は、長期的な日米同盟に不利益となりかねない。もし配備後に事故が起きれば、決定的なダメージになることを日米政府は肝に銘じるべきだ。
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