The Osprey Deployment: Use the Accident Report for Prevention

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 事故の原因や背景の分析結果を、再発防止策の徹底にきちんと生かすことが肝要である。

 防衛省が、4月にモロッコで発生した米海兵隊の新型輸送機MV22オスプレイの墜落事故に関する分析評価報告書を公表した。

 報告書は、経験の浅い副操縦士がミスを重ねた「人的要因」が主たる事故原因と結論づけた。最大秒速14メートルの強風の中、飛行マニュアルに反して、追い風を受ける方向に機体を旋回し、回転翼の角度を規定以上に傾けたという。

 オスプレイの機体自体は事故の要因ではない、としている。

 報告書は、米軍の詳細な事故調査に基づいており、納得できる内容だ。オスプレイが他のヘリコプターなどと比べて特に危険であるかのような評価は公平でない。

 大切なのは安全性を高める具体策だ。海兵隊は既に、飛行マニュアルを改訂したうえ、追い風時の回転翼操作の模擬訓練を操縦士に課す方針を示している。

 事故は米兵の生命に直結する。米軍が安全確保に真剣に取り組むのは当然だが、日本側も、これを確認する必要があるだろう。

 日米合同委員会では、人口密集地上空の飛行や低空飛行の制限など、オスプレイの国内運用の具体策を協議している。安全に最大限配慮した合意を目指したい。

 防衛省は9月中旬にも、6月の米フロリダ州での事故評価も含めて、オスプレイの安全性に関する最終的な見解をまとめ、国内飛行の是非の結論を出す予定だ。

 オスプレイが配備される沖縄県だけでなく、訓練飛行が行われる可能性のある本州などの一部自治体が飛行反対を政府に申し入れているが、過剰反応ではないか。

 訓練は、北東アジア有事などに備えるもので、日本の安全保障につながっている。忘れてならないのは、なぜオスプレイを沖縄に配備するか、という点である。

 オスプレイは、普天間飛行場に配備中のCH46輸送ヘリコプターと比べて、巡航速力は2倍以上、行動半径も4倍以上になる。尖閣諸島まで給油せずに1時間弱で人員や物資を運べることになる。

 日米共同の作戦行動能力を大きく向上させ、抑止力も高まる。米政府が共同防衛の対象と明言する尖閣諸島を含む南西諸島の防衛に加え、人道支援や災害救援にも貢献が期待されよう。

 政府は、オスプレイの安全性に加えて、こうした米軍の機動力向上の意義についても関係自治体や国民に説明を尽くすべきだ。

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