Vying for a "Strong America" in Asia in the US Presidential Elections

Edited by Nathan Ladd

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米大統領選 アジアで「強い米国」競え

11月の米大統領選で再選をめざすオバマ大統領が民主党全国大会で正式指名され、民主、共和両党の正副大統領候補と政策綱領が出そろったが、注目したいのは両者のアジア太平洋戦略だ。

 中国の軍事的台頭や北朝鮮の核・ミサイル開発などで地域の環境は激変し、その行方は日米同盟の将来や地域の平和に直結する。米国民の関心は内向きがちだが、両候補には「強い米国」のあり方を徹底して競い合ってほしい。

 イラク、アフガニスタンの2つの戦争収束や医療保険改革などの実績を掲げて続投を狙うオバマ氏に対し、挑戦者のロムニー共和党大統領候補は財政再建と雇用を争点に攻勢に転じた。両者の支持率は伯仲しており、今後の論戦の深まりに期待したい。

 オバマ氏が「根本的に異なる2つの未来ビジョンの選択」と呼んだように、両陣営の対比は政策面でも鮮明だ。中でも日本やアジア諸国に重要な課題は、アジア太平洋にどう取り組むかにある。

 事実上の選挙公約となる両党の政策綱領では、ともに米国を「太平洋国家」とし、日本など同盟国を重視する基本は変わらない。

だが、民主党が説得と対話を通じた中国との「協調」を重視するのに対し、共和党は伝統的な「力による平和」を柱に、南シナ海などでの海洋進出や人民元操作などで「対立と牽制(けんせい)」を強調する。

 半面、民主党が日米同盟の「深化」に言及し、日本や朝鮮半島で「強力なプレゼンスの維持」を明言しているのに比べて、共和党の日米同盟や対日姿勢が必ずしも明確でないのは気がかりだ。

 国防費削減を強いられる中で米軍再編をいかに進め、同盟の抑止力をどう強化するか、豪州やインドなどとの連携拡大策などについても、もっと説明を聞きたい。

 資源・エネルギー、イランの核開発疑惑、シリア情勢などの問題でも中国の動向は重要だ。「責任ある大国」としての行動を求めていく上で、米国や日本が中国といかに向き合うかが問われよう。

 内政面の焦点は、巨額債務と雇用回復だ。民主党型の「大きな政府」と共和党の「小さな政府」のいずれを国民が選ぶかが米経済再生のカギを握るが、それは対外的な強さの回復にもつながる。

 いずれが勝利するにせよ、世界はアジア太平洋で米国の強い指導力の再生を求めている。

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