日米が手を携え世界の安定支えよ
米国のオバマ大統領が再選された。2期目の任期は2013年1月から始まる。超大国の指導者としての重責を自覚し、政経両面で世界の安定に尽力してほしい。
今年はロシアやフランスで大統領選があった。中国や韓国でも新しい指導者が生まれる。もはや1国で世界を動かせる時代ではない。日本も米国と手を携え、世界への貢献の一翼を担いたい。
「財政の崖」まず回避を
米大統領選は共和党のロムニー候補が終盤に追い上げ、民主党のオバマ氏と接戦を展開した。「大きな政府」か「小さな政府」か。米国の政治土壌が二極化していることが改めて浮き彫りになった。
保守とリベラルの距離の広がりは、仏大統領選などでもみられた。オバマ氏はシカゴでの勝利演説で「米国はひとつの家族だ」と訴えたが、分裂した国論を束ねるのは容易ではないだろう。
与党・民主党が上院、野党・共和党が下院の多数を占める「ねじれ議会」も解消されない。多くの重荷を背負うオバマ氏の前途が明るいとは言いがたい。
最優先課題はやはり米経済の再生である。リーマン・ショックから4年以上たっても、景気回復の勢いはなお鈍い。政府はねじれ議会の影響で有効な対策を打てず、米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和に頼らざるを得ない。
一方、12会計年度(11年10月~12年9月)の財政赤字は4年連続で1兆ドル(約80兆円)を超え、もはや放置できない状況にある。成長と財政再建の両立なくして、真の経済再生は望めない。
まずは「財政の崖」を回避すべきだ。大型減税の失効や歳出の強制削減が重なり、13年から急激な財政引き締めが始まりかねない。米国だけでなく世界全体の経済を危険にさらすことになる。
すべての所得層の減税継続を訴える共和党と、富裕層には増税を求めたい民主党の対立は根深いが、最悪の事態だけは避けなければならない。双方が早く折り合い、合意点を見いだしてほしい。
成長戦略の詰めも急ぐ必要がある。オバマ氏は16年末までに、製造業で100万人の雇用を創出する目標を掲げた。連邦政府の法人税率を35%から25~28%に引き下げる方針も表明している。
新型天然ガスの開発・生産という「シェールガス革命」なども追い風にして、米国の産業を活性化できるのか。そして安定した雇用や所得を生み続けられるのか。オバマ氏を再選に導いた中間層の大きな期待はそこにある。
米国では上位1%の富裕層が全所得の約20%を稼ぐ。他方、医療保険に入っていない国民が5000万人近くもいる。成長の促進だけでなく、所得格差の是正や医療保険改革も課題になるだろう。
もちろん中長期的な財政再建の道筋も示さなければならない。オバマ氏は4兆ドルの財政赤字削減を表明したが、ここでも党派の対立が障害となる。与野党が協力し、増税と歳出削減のバランスのとれた計画をまとめるべきだ。
世界経済の減速感が強まれば、保護主義や通貨安競争の土壌が生まれやすくなる。そんな内向きの圧力を抑え、グローバル化や市場経済の果実を取り込むために米国と日本が協力していくべきだ。
日米同盟強化が不可欠
日本にとっての関心事は経済だけではない。中国の海洋進出や金正恩政権の基盤が不確かな北朝鮮の動向など、日本の安全保障は大きな脅威にさらされている。これに対応するには日米同盟という盾が必要なのは言をまたない。
オバマ氏が打ち出したアジア重視の外交方針は2期目も維持される見込みだ。ただ、財政難で国防費の大幅削減を余儀なくされるのは確実である。在日米軍の抑止力におんぶにだっこという甘えを、日本は捨てた方がよい。
米軍と自衛隊が補い合い、隙を見せない態勢を築くことが重要だ。沖縄の普天間基地移設を巡る日米の行き違いを解消し、安定した関係に戻す努力が欠かせない。
日米が一体となって世界のために何ができるか。共通の目標を持つことも同盟強化に資する。紛争地域での自衛隊の平和維持活動の枠を広げたり、発信元が不明なサイバー攻撃を防いだりするグローバル協力など、日本にできることはたくさんある。
中国の今後の動向によっては、日米安保の再定義なども政治日程にのぼってくるだろう。日本が環太平洋経済連携協定(TPP)に参加すれば、経済的な利益があるのみならず、米国がアジアで存在感を発揮するのを側面支援できるという安保上の利益もある。
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