米大統領選で、民主党の現職バラク・オバマ氏が、共和党候補ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事を退けて、再選を決めた。
オバマ氏が2期目で直面する課題の重さは、4年前にひけをとらない。金融危機はひとまず克服したが、経済再生は、なお途上にある。米国が世界で担う役割と責任の大きさを踏まえ、強い指導力を発揮してもらいたい。
オバマ氏は、「1期目の任期中に財政赤字を半減する」との公約を実現できなかった。雇用創出も思うようには進まず、失業率は8%近くに高止まりしている。
それでも再選できたのは、経済再建や安全保障分野での実績がおおむね評価されたからだろう。
就任早々に巨額の景気対策を実施し、金融システムを安定させた。破綻した米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)も救済して、大恐慌に転落する瀬戸際にあった米国を救ったと言える。
「負の遺産」だったイラク戦争を終わらせ、アフガニスタンからの米軍撤収にも道筋をつけた。
ロムニー氏の敗因は、大統領の経済失政を指弾しながら、説得力のある経済政策を示せなかったことに尽きる。
オバマ氏の最優先課題は、景気対策と財政再建の両立である。
年末から年明けにかけ、大型減税が失効し、歳出の強制削減が始まる「財政の崖」が控えている。何の手も打たなければ、大規模な財政緊縮をもたらし、米国は深刻な景気後退に陥りかねない。日本など世界への影響は甚大だ。
この試練を乗り切るには、連邦議会の協力が欠かせない。
議会選の結果、下院で共和党、上院で民主党がそれぞれ過半数を占める“ねじれ”の構図に変化はなかった。経済の混乱を防ぐため必要な法案を成立させるべく、オバマ氏は全力を挙げるべきだ。
外交・安全保障政策でも、北朝鮮、イランの核開発やシリア情勢など懸案が山積している。
特に注目したいのは、経済・軍事で膨張する中国への政策だ。
米国が「太平洋国家」としてアジア重視の戦略を打ち出していることは、地域の安定と繁栄に大きな意味を持つ。米国は同盟国の日本をどう位置づけ、中国とどのような関係を築くつもりなのか。
日本も、米国主導の環太平洋経済連携協定(TPP)への早期参加を目指し、米国と政策協議を重ねる必要がある。自らの役割を果たす中で、日米関係をより強固にしていかなければならない。
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