The Key To Our Recovery Is the Comeback of the American and Chinese Economies

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 「危機突破」を掲げる安倍晋三首相はデフレから脱却して円高を是正し、経済成長を実現すると強調した。

 昨年末には、消費者物価上昇率2%のインフレ目標を達成できるまで無制限に金融緩和を継続すると発言。年明け早々にも大型補正予算を編成するよう指示した。

 今年こそデフレから脱却し、「失われた20年」に終止符を打つことを期待したい。

海外要因にはリスク

 昨年は後半に輸出の減少などが響いて景気は失速。今年は民間調査機関の多くが景気回復を予想し、物価変動を除いた実質で1~2%の成長率を見込んでいる。中国や米国の景気が盛り返して輸出が増加するというのがその根拠である。

 確かに中国経済は底入れの兆しがみられ、世界銀行は8%を超える成長を見込む。だが個人消費拡大などによる内需主導型成長への構造転換は遅れ気味。習近平新指導部の力量が問われよう。領土問題に伴う日本製品の不買運動も気掛かりだ。

 米国経済は住宅市況が改善に転じたものの、減税失効と歳出削減が重なる「財政の崖」回避協議は難航。再選したオバマ大統領の指導力に不安が残る。債務問題に揺れた欧州連合(EU)は小康状態といえ、南欧諸国の先行きは不透明。海外要因には下振れリスクが目立つ。楽観は禁物だ。

影響与える電力問題

 国内では、中小企業などの借金返済猶予を金融機関に求める中小企業金融円滑化法が3月末に期限切れを迎える。企業が元気を取り戻す施策が必要だろう。

 原発の停止で電気料金値上げが相次ぎそうなことも懸念要因。茂木敏充経済産業相は民主党政権時代の「2030年代に原発稼働ゼロ」目標の見直し方針を明言した。電力問題の行方は景気に大きな影響を与えるため、適切な対応を望みたい。

 公共事業を中心にした景気浮揚策について「古い自民党政治への回帰」との指摘がある。ばらまきにならないよう、老朽化設備の維持・補修など必要な事業に絞るよう心掛けるべきだ。

 財源難から景気対策資金を国債増発で賄うと、先進国で最悪水準の日本財政に市場が不信感を募らせる心配がある。国債価格が急落しないよう目配りすべきだ。

 秋口には、14年4月から消費税率を引き上げるかの決断を迫られる。景気好調であれば増税実施が見通せて市場の信頼も得やすい。引き上げ前の駆け込み需要で景気の一段の盛り上がりも見込める。

 デフレが長引く背景には、産業空洞化などで国内の雇用、賃金状況が悪化していることがある。中長期的に成長を持続するためには強い国際競争力を持ち、内外で稼げる産業の育成が不可欠。安倍政権には成長戦略を練り直し、具体的な工程表を設けて着実に実行することを求めたい。

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