沖縄市の米軍基地跡地にある市のサッカー場の地中から見つかったドラム缶の付着物から、強い毒性を持つダイオキシン類が検出された。
埋まっていた複数のドラム缶には、ベトナム戦争時に猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤などを製造していた米化学品メーカー「ダウケミカル」の社名が記されていた。そのことから、内容物が枯れ葉剤ではないか、との懸念が広がっている。
ドラム缶の付着物や周辺土壌を採取し、調査していた沖縄防衛局は24日、枯れ葉剤生成の際に発生する特有の成分は含まれなかったとして、「ダイオキシン類検出をもって現時点で枯れ葉剤とは断定できない」と報告した。
今回の防衛局の報告は、あくまで中間段階である。周辺の土壌や水質調査を徹底することはもちろん。加えて、なぜダイオキシン類が検出されたかを究明しなければならない。ドラム缶が埋まっていた場所が米軍基地だった当時、どういう使われ方をしていたのか、使用履歴を米軍に明らかにさせることが不可欠だ。
サッカー場の地中から見つかったドラム缶は合計26本、このうち複数に米化学品メーカーの社名が記されていた。
ダイオキシンは、発がん性や催奇形性が指摘される強い毒性を持った物質。自然分解されにくく、土壌に長く残り、人体内に蓄積されるという。
枯れ葉剤でないことが完全に証明されないままでは、人体や環境への影響など地元自治体や周辺住民の不安は払拭(ふっしょく)されない。国はそのことを十分認識すべきだ。
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基地跡地の汚染問題は枚挙にいとまがない。そのたびに、地元自治体は跡利用計画の遅滞を余儀なくされた。
1995年に返還された恩納村の恩納通信所で汚水処理槽からポリ塩化ビフェニール(PCB)などの有害物質が検出された。2003年に返還された北谷町のキャンプ桑江北側地区では、油分に汚染された土壌や環境基準を大幅に上回る鉛、ヒ素、六価クロムなどが検出された。
日米地位協定では、米軍に原状回復や補償の義務はない。昨年4月に制定された駐留軍用地跡地利用推進特別措置法(跡地法)も、日本の負担で処理することがうたわれている。しかし、米軍の管理のずさんさのツケを市民に回すようなことが繰り返されてはならない。
米軍に土地使用履歴の提出を義務づけるなど返還前の事前調査を徹底させることが必要だ。
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枯れ葉剤疑惑が生じるのは、基地内に何があるのか、知ることができないからだ。
猛毒のダイオキシンを含んだ枯れ葉剤がベトナム戦争で大量に使用され、多くの悲劇を生んだ事実は、いまだ世界に影を落としている。
復帰前の沖縄に大量に貯蔵されていたのではないか、という疑惑も解消されていない。米政府は沖縄における枯れ葉剤の存在を否定し続けているが、退役米軍人らによる証言もある。
事実の徹底究明と情報開示がなければ、県民の疑念と不安が解消されることはない。
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