By Wiretapping Its Allies, the US Betrays Them

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[米盗聴疑惑] 友好国を裏切る行為だ

( 11/2 付 )

 米政府の通信傍受機関である国家安全保障局(NSA)が、ドイツのメルケル首相の携帯電話を10年以上にわたって盗聴していた疑惑が明らかになった。

 メルケル氏は疑惑発覚を受けてオバマ米大統領と電話会談し、説明を求めた。オバマ氏は「ドイツ首相の通信を傍受しておらず、今後も傍受することはないと保証する」と応じたが、過去の盗聴について明確には否定しなかった。

 NSAについては、ロシアに亡命した米中央情報局(CIA)元職員スノーデン容疑者がさまざまな秘密活動を暴露した。同容疑者の情報に基づき、NSAが35カ国の指導者らの電話を盗聴していたと、最近も英紙が報じている。

 民主主義や個人の自由を標ぼうする米国がこうした行為に手を染めていたのなら残念だ。関係国が反発するのは当然である。米国には、何のために電話やメールを調べていたのか説明を求めたい。

 米国では今年に入って、NSAが一般市民の膨大な量の個人情報を収集していたことが暴露され、問題化した。オバマ大統領は批判を受けて8月、「米国民の信頼が必要だ」として改革に乗り出す決意を表明していた。

 内部告発文書によれば、1カ月で1000億件近くの情報が収集されていた。米政府は「外国情報監視法」に基づいた手続きを踏み、連邦議会の情報特別委員会による監視の下で合法的に行う情報収集だと弁解した。だが、これだけ膨大な件数の情報収集に対し、十分な監視ができるとは到底思えない。

 気になるのは、今回の外国指導者らの電話盗聴についてオバマ大統領が知らされていなかったという点だ。仮に事実とすれば、NSAが大統領や議会などの了解を得ずに盗聴していたことになる。必要に応じて行うはずの情報収集が目的化し、暴走してしまった可能性は否定できない。

 NSAによる情報収集は2001年の9.11同時中枢テロを受けて強化された。米政府はNSAなどが収集した情報を同盟国に提供し各国でテロを防いできたと主張する。だが、友好国指導者の電話盗聴については説明できまい。

 日本では、米国から提供される情報の保護を主な目的とした特定秘密保護法案が国会に提出された。ただ、米国から寄せられる情報が国際的な信頼関係を裏切るような手法で収集されていたら、日本が加担することになりはしないか。それを検証することもできない法案には問題点が多い。

 米国は世界の信頼を取り戻すためにも、情報収集の在り方について見直しを進めるべきだ。

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