US Spying Allegations: Full Disclosure a Must

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米盗聴疑惑 情報収集の全容公開を(10月29日)

 米情報機関の盗聴が世界各国の指導者にも行われている疑いが強まっている。事実なら許し難い行為で米国の信用失墜は免れない。

 米紙によると、国家安全保障局(NSA)がドイツのメルケル首相ら外国指導者約35人の電話などを盗聴していたと米政府高官が認めた。

 同盟国や友好国も数多く含まれているとみられ、米国家安全保障会議(NSC)は情報活動の在り方を見直すとの声明を出した。

 米政府高官は米紙に対し、オバマ大統領は知らなかったと強調したが、本当に大統領は関与していなかったと断言できるのか。

 盗聴の対象やその目的、盗聴期間や内容など全容について米国は明らかにする責務がある。

 携帯電話が盗聴されていたとされるメルケル氏はオバマ氏に電話で「政府首脳の通信傍受という行為はあってはならない。信頼への深刻な裏切りだ」と異例の強い口調で非難した。ドイツ誌によると、メルケル氏への盗聴は10年以上に及ぶという。

 米中央情報局(CIA)元職員のスノーデン容疑者が、米国が膨大な個人情報を極秘収集していたと暴露して以来、米国の闇に隠れた活動が次々と明らかになっている。

 NSAによるルセフ・ブラジル大統領の通話傍受が発覚し、同大統領は今月の訪米を中止した。メキシコでも就任前のペニャニエト大統領のメールを傍受したと報じられた。

 個人情報の極秘収集が暴露された当初、米政府は「テロ対策のため」と正当化していた。だが今回明らかになったのはテロとは直接関係のない各国首脳に対する盗聴である。犯罪的行為と言っても過言ではない。

 行きすぎた情報収集の全容を明らかにしない限り、米国が国際社会から信用回復を得るのは難しい。

 欧州連合(EU)は首脳会議で急きょ、盗聴問題を取り上げ、ドイツ、フランスが再発防止を目指し米国と交渉することを決めた。

 対照的なのが日本政府の対応だ。菅義偉官房長官は安倍晋三首相への盗聴の懸念について「全く問題ない」と否定し、静観の構えを見せる。こうした問題についても物が言えないようでは外交姿勢が疑われよう。

 ドイツやブラジルはインターネット上の個人情報保護を定めるための国連決議採択を目指しているという。米国への警告にもなる。各国は採択へ足並みをそろえてもらいたい。

 国家による野放図な情報収集に一定の歯止めが必要だ。一方、犯罪捜査ではネット空間での情報が重要性を帯びていることも確かだ。

 両者を整合させる国際的な規範づくりを急ぐべきである。

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