I Want the US Ambassador To Experience the Reality of the Disaster Area

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米大使が被災地へ 「現実」を感じてほしい

 キャロライン・ケネディ駐日米大使が今週、東日本大震災の被災地を訪れる。実質的な仕事始めに被災地を選んだことに敬意を表したい。ぜひ本県にも足を運んでほしい。

 米国や日本はもとより世界中の人々にとって、いまだ米大統領の代名詞的存在の一人であるケネディ元大統領の長女。その父が凶弾に散ってから、ちょうど50年となる22日を前にしての来日だった。

 命日を前にして、オバマ大統領夫妻らは首都ワシントン郊外にある元大統領の墓を訪れ献花した。その血筋を代表する立場にありながら、その日を日本で迎えることに、新大使としての心意気を見る。

 新大使の被災地訪問は、その多忙さ故に短時間にとどまるだろう。それでも「仕事始め」に被災地を訪れる気持ちに応えて、現地の人々は心からの笑顔で迎えるはずだ。

 しかし、その裏側には、いまだ実感に乏しい「復興」への焦りや悩みが隠れている。岩手大研究室の調査では、精神状態が震災後から好転していない人が昨年調査より増えている傾向が示された。

 被災地に続き、懸案の米軍普天間飛行場移設問題に絡み早期の沖縄訪問も取りざたされている。徹底したリベラリストといわれる目で被災地や沖縄の「今」をじかに感じ、これから本格化する職務に反映させてもらいたい。

 普天間問題をはじめ、大詰めの環太平洋連携協定(TPP)交渉、沖縄県の尖閣諸島をめぐる日中対立、北朝鮮の核開発など、米国の国益に直結する日米間の課題は山積みだ。そうした折に、本職は弁護士であり、父親の業績を記念する図書館支援団体理事長である彼女を駐日大使に据えることに当初、米国内のメディアは批判的だった。

 来日経験があるとはいえ、本格的に日本を学んだことはない。話題性で注目を集めるものの「外交官」としての手腕は未知数だ。しかし、新大使には他者をしのぐ「資質」がある。それは、米国でロイヤルファミリーとも並び称される出自であり、オバマ大統領との近しさだ。

 オバマ氏が大統領になったのは、最初の選挙の民主党大統領候補指名争いに際し、彼女が米紙に「オバマ氏は父の再来」とする記事を寄せて支持拡大に貢献したのが要因とされる。選挙資金集めでも存在感を発揮。以後、「彼女ほど短時間で大統領に電話がつながる人物はいない」(米国の有力外交官)という。

 結果次第では名門ケネディ家の威信が傷つくことを覚悟で「オバマ大統領」実現に奔走した胆力は、これも政治力だろう。人柄は謙虚とされるが、こうした「強さ」が日米関係の近未来にいい形で生かされることを望む。

(2013.11.25)

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