無人機問題 国際的ルールづくり急げ 2013年12月10日
自国兵士を危険にさらさず遠隔操作で空から敵を攻撃する無人機は、時に民間人を巻き込むという人道問題を引き起こしている。その使用などについての明確な国際的ルールはないために、新たな軍拡競争にもつながっている。
国連人権委員会の要請で、対テロと人権を担当するエマーソン特別報告者は無人機攻撃の民間人被害について調査を行い、その報告書が10月に公表された。無人機攻撃は主として米軍や英軍により、国際テロ組織アルカイダやイスラム武装組織タリバンを標的に実施されている。
報告書によると、パキスタンでは2004年以来、少なくとも330回の攻撃で2200人以上が死亡。うち400人が民間人、200人は非戦闘員だった。アフガンでは民間人50人以上が死亡、イエメンでも20人以上の死傷者が出たとみられる。
こうしたことから、エマーソン氏は無人機攻撃について国際的合意ができていない法的問題点が多くあるとして、ルールづくりを急ぐよう各国に求めた。特に米国が対テロ戦を理由にして戦闘地域の境目を設けずに、無人機攻撃を仕掛けている点について、国際的規範に違反している可能性が強いと指摘している。
11月半ばにジュネーブで開かれた特定通常兵器の使用に関する条約の国際会議では「殺人ロボット兵器」の規制を視野に入れた論議を来年5月に始めることで合意した。しかし米英両国は、無人機は敵を自動的に識別して殺傷するわけではないとして、ロボット兵器ではないと主張している。
使用についてルールもなく、兵器として位置付けもあいまいなまま無人機が拡散しているのは問題だ。所有国は05年の41カ国から11年には76カ国に増加(米政府監査院報告)。現在では87カ国に及ぶとの調査もある。多くの国は自国領土と周辺での監視や探査活動に使っているが、米国が攻撃用に使用している無人機と同じか、似たような型のものを持っている国が26カ国あるという。
日本は米国の最新鋭無人偵察機を自衛隊に導入することを検討している。尖閣諸島付近に飛来する中国の無人機は、偶発的な武力衝突を招きかねない。国際ルールがない無人機の危険と、日本も無縁ではない。
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