Obama Diplomacy: The Superpower’s Active Engagement Called into Question

Edited by Kyrstie Lane 

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◆「アジア重視」具体化が課題だ

 アジア太平洋地域や中東などで、国際秩序の流動化が進んでいる。平和と安定を維持するには、依然、唯一の超大国である米国による各地域への積極的な関与が欠かせない。

 しかし、外交・安全保障政策の軸足をアジア太平洋に移すというオバマ米大統領の「アジア重視」路線は、中東政策に足を取られ、順調に進んでいない。

 国内の政治基盤が弱いオバマ氏が、外交を立て直せるか。4月に予定されるアジア歴訪に向け、難題が待ち構えている。

 ◆シリア政策でつまずく

 オバマ外交の迷走ぶりを露呈したのが、シリア政策だ。

 10万人もの死者を出しているシリア内戦を巡り、オバマ氏は昨夏、アサド政権が化学兵器を使用したとして武力攻撃を表明した。同時に、攻撃の承認を議会に求めたのは極めて異例な措置だ。議会に攻撃の責任分担を促したことは大統領の威信低下にもつながった。

 米国の圧力が奏功した面もあり、議会が決議を行う前に、アサド政権は化学兵器の放棄に同意した。攻撃には至らず、政権の存続は容認された。

 アサド政権に反発する周辺諸国や国内の反政府勢力は、オバマ氏の態度を「変心」と見なし、不信感を募らせた。オバマ氏にも誤算だったのではないか。

 イランの核問題では、オバマ氏はイラン大統領との直接対話に踏み切り、米国は関係国と共にイランとの核交渉を開始した。だが、米議会内に反対論が強く、交渉の行方は不透明になっている。

 アフガニスタンに派遣されている米軍は、今年末をめどに大部分が撤収する。イラクの米軍は撤収済みであり、2001年の米同時テロ以来、十数年にわたる「テロとの戦い」には、一応の終止符が打たれる見通しだ。

 米社会では「戦争疲れ」のため、他国への介入や関与を嫌う傾向が顕著になっている。この米国民の「内向き志向」もオバマ外交に影を落としている。

 ◆党派対立が懸念される

 オバマ氏が議会への目配りを強いられるのは、与党の民主党が上院では過半数を維持するものの、下院は共和党に支配され、思うように政策決定できないからだ。

 共和党は、政府に攻勢をかけ続けている。昨年は、大統領が1期目に成立させた医療保険改革(オバマケア)の実施を徹底的に妨害し、10月には政府機関の一部停止まで引き起こした。

 オバマ氏の支持率は一時、40%を切り、過去最低となった。

 今年11月には、議会の中間選挙を控えており、共和党がより対決色を強めるのは確実だ。オバマ氏の議会運営は厳しいものとなろう。外交の選択肢が狭められることが懸念される。

 だが、アジア太平洋では、中国が力による現状変更を試み、地域の緊張は高まる一方だ。北朝鮮情勢も不透明感を増している。オバマ氏にはアジア重視路線に本腰を入れて取り組んでもらいたい。

 ◆同盟国と共に抑止策を

 米国が取り組むべき課題は明白だ。東シナ海における一方的な防空識別圏設定で見られたような国際常識を逸脱した中国の膨張主義を、地域の同盟国や友好国と共に抑止することである。

 オバマ政権は既に、アジア太平洋で活動する米海軍艦船を、20年までに全体の5割から6割に引き上げる構想を打ち出している。韓国には、800人規模の陸軍部隊を新たに派遣し、在韓米軍を増強するという。

 経済分野では、米国と日本が中心となって、アジア太平洋地域の新たな自由貿易圏となる環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉が大詰めを迎えている。

 いずれも実現すれば、中国の覇権を求める動きに対する強い牽制(けんせい)効果を持とう。

 一方、中国の習近平国家主席は、オバマ氏に「広大な太平洋には両大国を受け入れる十分な空間がある」と述べ、「新しいタイプの大国関係」の構築を求めた。

 アジア太平洋を二つに分割し、西太平洋における中国の勢力圏の拡大を米国に認めさせる構想と見られている。

 気がかりなのは、米政府内に「新たな大国関係」に同調するかのような声があることだ。中国との経済面での相互依存に配慮しているからだろう。

 日本や韓国、オーストラリア、フィリピンなどの同盟国はもとより、アジアで、米国の代わりに中国が主導する秩序を受け入れたい国はほとんどあるまい。米国には慎重な対応を望みたい。

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