日米すきま風/不信の種を早急に取り除け
外交において首脳同士の信頼の深さと相手国の面目をつぶさない十分な配慮を欠いては、緊密な関係を保ち得ない。
だからだろう、同盟国、日本と米国の間がぎくしゃくしている。日中、日韓をはじめ、不透明な北東アジア情勢を踏まえれば、日米関係の強固さをアピールしなければならないとき、なのにである。
主因は安倍晋三首相の歴史認識に関わる言動にある。とりわけ、昨年末の靖国神社参拝の影響が大きく、直後に米政府は「失望」を表す声明を出した。
米国がアジア最大の同盟国に明確に苦言を呈するのは異例で、その背景の一端が明らかになった。参拝の2週間前、電話会談でバイデン副大統領が自らの中韓への根回しを踏まえて「行くべきではない」と繰り返し自制を求めていたというのだ。
安倍首相は「心の問題」と位置付ける立場から「自分で判断する」と拒否。参拝に踏み切ったという経緯だ。
確かに、他国の意向に縛られ、従ういわれはない。ただ、参拝の強行は中国、韓国の反発を呼び、両国首脳との会談を通じた関係改善が一層見通せなくなることは容易に想像がつく。
実際、雰囲気はさらに悪化。首脳会談の実現に向けて環境整備に奔走してきた事務当局の努力も水泡に帰す結果となった。
外交的配慮よりも自らの信念を優先させた行動は、国のトップの判断として疑問視せざるを得ない。安倍首相が強くこだわる「国益」を損ねては、整合性も保てまい。
同盟国に対する「失望」は日本側にもある。日米同盟の深化をうたう一方、オバマ政権が対中重視に傾きつつあるのでは、との疑念を払えない。中国の防空識別圏設定をめぐり、腰が引けた印象を受ける米国の対応がその一例だ。
特定秘密保護法成立、集団的自衛権の行使容認への準備、米軍普天間飛行場移設に伴う沖縄県知事の名護市辺野古の埋め立て承認、さらには経済成長を支える環太平洋連携協定(TPP)合意に向けた交渉参加など、米国の意向に沿うよう努めているのに、という思いがある。
「相互不信」を呼び込む根っこに横たわるのは、靖国参拝のほか従軍慰安婦問題などの歴史に対する認識の隔たりだ。
対中、対韓関係はもとより、日米間においても、しばしば浮上する厄介な案件。問題化しては修復に時間と精力をそがれる、その繰り返しは避けたい。
簡単に歩み寄れない課題であることを深く受け止めて、当面、刺激的な言動を控える戦略性を持つべきではないか。固執することに伴う、あらゆる不利益を直視するということだ。
先日の岸信夫外務副大臣、谷内正太郎国家安全保障局長に続いて、岸田文雄外相が7日に訪米。ケリー国務長官との会談に臨む方向だ。
日米双方が不信の種を取り除き、隙のない関係へ修復を急ぐべきだ。北東アジアの緊張緩和にも関わることなのだから。
2014年02月03日月曜日
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