Obama’s State of the Union Address: A Spurned ‘Asian Pivot’

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オバマ氏演説 そっけなかった「アジア重視」(1月30日付・読売社説)

 中間所得層への支援を優先課題に掲げ、雇用創出や所得格差是正の実現を約束した。11月の中間選挙に向け、低迷する支持率の回復を意識した演説と言えるだろう。

 オバマ米大統領が、1年間の施政方針を示す一般教書演説を行って、今年を「行動の年」と位置づけた。固い決意がうかがえる。

 オバマ氏は、下院を支配する共和党と激しく対立し、政府機能の一部停止という事態を招いた。内政、外交とも失点続きで、支持率が一時は、就任以来最低の水準にまで落ち込んだ。

 中間選挙で、民主党が上下両院で少数党に転落すれば、政権のレームダック化は決定的だ。巻き返しへの戦略が問われている。

 オバマ氏は演説で、金融危機後の経済再生の成果を強調した上で景気回復の恩恵を得ていない低所得者層に配慮し、最低賃金引き上げを提案した。環太平洋経済連携協定(TPP)に伴う雇用拡大や移民制度改革も表明した。

 いずれも、民主党の支持基盤固めにつながる政策だ。

 特に注目されるのは、議会で法案が可決されない場合、大統領令を発すると述べたことだ。最低賃金引き上げを共和党が拒んでも、連邦政府契約職員に限っては、大統領令で引き上げるという。

 共和党との対立軸を鮮明にした形だが、共和党は早くも「議会軽視」と強く反発した。対立はかえって先鋭化する恐れがある。

 選挙の年だけに、内政が重視され、外交・安全保障政策への言及は比較的少なかった。

 アフガニスタンに駐留する米軍戦闘部隊が今年末に撤収し、テロとの戦いが「ようやく終わる」と強調した。撤収後もテロ対策には万全を期してもらいたい。

 エネルギー問題では、「シェールガス革命」を念頭に、「エネルギー自給に近づいた」と述べた。これが、中東への米国の関心の減退につながっては困る。

 アジア太平洋については「引き続き、重視し、同盟国を支え、より安全で繁栄した未来を形作っていく」と主張した。「アジア重視」政策の継続は言明したものの、そっけない表現にとどまった。

 オバマ氏はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を2年続けて欠席した。「重視」をどう具体化していくのだろうか。

 中国の台頭を受け、米国と、日本など同盟国との結束が今ほど必要なときはない。オバマ氏は今春のアジア歴訪で、指導力を一層発揮することが求められる。

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