今世紀の歴史はアジア太平洋を主舞台に描かれる。
オバマ米政権はかねてそう宣言し、外交の軸足を大西洋から太平洋へ移すと唱えてきた。
だが、その「アジア重視」路線の難題として、自らの同盟国間の反目が重くのしかかるとは想定できなかっただろう。
日本と韓国の両政府の間に続く不毛な対立は、米政府を板挟みの立場に追い込んでいる。
ケリー国務長官は今月、訪米した岸田外相と会談したのちに訪韓し、オバマ大統領の4月の日韓訪問予定を伝えた。
大統領は仲介役を担う用意はある。だが、その前に当事者同士で関係を修復するのが筋だ。ケリー氏はそう呼びかけた。
米国からの異例の和解勧告といえる。日韓両政府はこのまま自らの近隣関係まで米国頼みにするつもりなのか。互いに頭を冷やし、自助努力で歩み寄りを図るべきだ。
周辺では緊張の火種が増えている。軍拡と勢力拡張を進める中国にどう対処するか。北朝鮮に核の放棄をどう迫るか。
そんな差し迫った難題が眼前にあるというのに日韓両政府が背を向け合うことに、米政府はいらだちを強めている。
オバマ氏の来訪についても日韓はさや当てを演じた。国賓として長い滞在を望む日本側と、短時間でも立ち寄らせたい韓国側。駄々をこねる兄弟げんかのような綱引きに、米政府はほぼ平等の扱いで応じた。
若い指導者が自らの後見役を処刑した北朝鮮の情勢は予断を許さない。この時期の米大統領の訪韓は理にかなう。日本は国賓待遇といった儀礼形式にこだわるべきではあるまい。
むしろ気にかけるべきは、近隣外交をめぐる緻密(ちみつ)な戦略を描く能力そのものが安倍政権には欠けているのではないかという米国側の懸念だろう。
集団的自衛権の行使容認で対米同盟を強化するという掛け声とは裏腹に、靖国神社参拝で同盟を揺さぶる安倍首相の真意を米側は測りかねている。
一方の韓国政府も意固地な姿勢を続けている。ケリー氏との共同会見で尹炳世(ユンビョンセ)外相は、現状を改善する責任は日本側にのみあるかのような見解を示した。一方的に相手の非を唱える発言には賢明さが感じられない。
日韓の安全保障はともに米国の傘のもとにあるが、その枠組みの強度を保つのは、日韓それぞれの外交努力である。
日米韓の結束は当事国のみならず、東アジア全体の安定に欠かせない。日韓両政府とも、その重い責任を自覚すべきだ。
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