TPP日米協議 譲れないから「聖域」だ(4月16日)
重要5農産物を「聖域」とする日本の方針が揺らいでいる現状に、危惧を覚えざるを得ない。
環太平洋連携協定(TPP)交渉で、甘利明TPP担当相が渡米し、難航する日米の関税分野について米通商代表部のフロマン代表と協議する。
来週予定されるオバマ米大統領の来日に合わせ、交渉を加速させる狙いだ。安倍晋三首相は「最終局面に入った」との認識を示し、日米首脳会談での大筋合意に意欲を見せている。
焦点は牛肉など重要5農産物の扱いで、米国の態度は強硬だ。首脳会談を期限とみなし、聖域で譲歩することは断じて許されない。
甘利、フロマンの両氏は先週、日本で関税問題を集中的に議論したが、隔たりは大きく、着地点は見いだせなかった。
協議の中で、米側は重要5農産物に一定の関税を残すことを認め、牛肉については関税を現在の38・5%から10%未満に引き下げる案を提示したという。
これに先立ち、日本はオーストラリアとの経済連携協定(EPA)に大筋で合意し、牛肉関税を段階的に半分程度に下げていくことを受け入れた。
つまり、半分ならいいが、一ケタでは低すぎるというのが日本の主張である。
いつの間にか牛肉は死守すべき聖域ではなくなり、関税の下げ幅に論点がすり替えられている。
自民党の対応もおかしい。党農林部会などは、日豪EPAで合意した関税水準を「越えられない一線」とする決議を行った。
これでは、牛肉の聖域外しを追認するようなものではないか。
日豪EPAを土台に、米国とのTPP交渉を決着させるという政府の戦略自体が誤りだ。
業界団体の圧力を受けた米国が強硬姿勢を崩さず、一層の譲歩を余儀なくされる恐れさえある。
そうなれば、当然、オーストラリアにも同等の条件を認めることになるだろう。
結局、打撃を受けるのは、知らぬ間に交渉カードに選ばれた品目の生産者だ。
政府・与党は、重要5農産物を細かく分類した586品目の一部については、関税撤廃も検討しているようだが、内容は全く明らかにされていない。
日豪EPAの条件を決める過程も、国民には見えなかった。
このような不透明なやり方で、ずるずると譲歩を重ねるのは、国民への裏切りにほかならない。
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