Hasten the Close of Japan-US Talks and Conclude TPP Negotiations

<--

日米協議の詰めを急ぎTPP交渉決着を

2014/5/23付

 シンガポールで開いた環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合で、大筋合意に向けた道筋がようやく見えてきた。日米など交渉12カ国による共同声明は「交渉妥結に何が必要か、見解を共有した」と記し、残る課題が絞られてきたことを示した。

 決着を目指す機運が高まったことを歓迎したい。前回の2月の閣僚会合では、自由化を主導すべき日米が2国間協議で膠着状態に陥り、他の10カ国に「模様ながめ」の空気が漂っていた。今回の会合で各国が積極姿勢に転じたのは、日米間の協議が前進し、障壁だった対立の構図が薄れたからだ。

 交渉の勢いを維持しなければならない。そのためには日米が最終的な詰めを急ぎ、日米合意の内容を堂々と各国に示す必要がある。具体的にどこまで合意したのか分からない曖昧な状態のままでは説得力に欠け、交渉全体を力強く推し進める力にはならない。

 これから先は時間との戦いになる。推進役の米国が、11月に議会の中間選挙を控えているからだ。オバマ政権の通商政策は、ますます議会や特定業界の意向に左右されやすくなる。

 労働組合や自動車産業など保護主義的な勢力は、個別議員への影響力が大きい。日本への輸出を増やしたい豚肉業界なども、強硬姿勢を求めて強い声を上げている。中間選挙が近づくほど、オバマ政権は譲歩しにくくなる。日米に残された時間は多くない。

 日米両国の経済規模はTPP交渉国の約8割を占める。日米協議で決まる措置は、TPP域内の自由化の実質的な水準の目安となるだろう。牛肉・豚肉、乳製品などの関税の引き下げ幅や、自由化にかける期間、セーフガード(輸入制限措置)などが日米間で具体的にどう決着するかによって、各国の対応は変わってくる。

 日米の交渉担当者は「21世紀型の自由貿易協定」というTPPの看板に恥じない中身で、合意を築いてほしい。見かけ上の関税率の数字でなく、経済的に意味がある実質的な市場開放が重要だ。

 関税による保護に頼らない強い農業を築く改革の実行が、安倍政権の急務だ。一時的に不利益を被る農家や企業を支援する移行措置が必要になる場合もあるだろう。TPP交渉が大詰めを迎えた今こそ、こうした国内対策を含めて、通商政策と農業政策の知恵の絞りどころである。

About this publication