レーダー着工 地元に情報を開示せよ
近畿地方唯一となる米軍基地「経ケ岬通信所」の工事が京丹後市丹後町で始まった。
弾道ミサイル探知に向けて「Xバンドレーダー」を配備する計画だが、着工という節目にもかかわらず、防衛省からの地元への連絡は前日午後だった。米軍相手に地元の意思を反映させることの難しさをいきなり突き付けられた形だ。
府と京丹後市が要望してきた「早めの事前通達」は聞き入れられたとはいえない。山田啓二知事と中山泰市長は防衛省に対して、誠意を持って情報開示に努めるよう粘り強く求める責任がある。
レーダーは北朝鮮のミサイルを想定し、グアムなどへの攻撃に備えて設ける。昨年2月の日米首脳会談で合意、青森県の米軍車力通信所に次ぐ2番目の配備になる。
府と市は9月、「住民の安全安心が確保される見通しがついた」として受け入れを表明した。以降用地確保が進んだ一方で、地元が防衛省に投げかけた「電磁波、水質、騒音の事前調査の結果公表」「立入禁止区域や飛行制限区域の提示」など7項目の申し入れには十分な回答が得られないままだ。
防衛省は工事情報に関して、速やかな伝達を地元に約束していたが、「米との信頼関係を損なう」として、いつ着工日をつかんでいたのかも明らかにしなかった。中山市長は国の対応を「誠実」と評価したが、理解に苦しむ。山田知事とともに「安全確保がなければ撤回要請もありうる」と発言してきたことを忘れてはならない。
経ケ岬通信所が自衛隊との共同利用施設ではなく、米軍専用区域であることも明らかになった。
日米地位協定に阻まれ、米軍の動向が地元に伝えらない例は珍しくない。昨秋の高島市でのオスプレイの訓練では飛来ルートが明かされず、反対運動のあった山口県岩国市の米軍住宅着工も事前連絡は直前だったという。
今後、より機密性が高いレーダーの搬入や基地の運用開始が控える。安全保障上の機密があるとしても何でも秘密にしたり、地元要望をないがしろにするようでは住民の不信感は募るばかりだ。工事中の安全確保はもちろん、市と府、府警、防衛省と設けた現地連絡会を十分機能させ、正確な情報開示や課題解決を図る必要がある。
先行して基地を抱える地域では米兵らによる不祥事に悩み、日米地位協定の見直しを切望している。京都も無関係ではいられない。抜本的な改定に向けた努力を政府は惜しんではならない。
[京都新聞 2014年05月28日掲載]
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