Childish ‘Goody Two Shoes’ Heroes Aren’t a Good Thing

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オバマ米大統領が、イラク北部へのアルカイダ系武装勢力の侵攻に対して直接軍事介入すべきかどうか悩んでいる。それを見て、米国の共和党タカ派やネオコンの残党たちの間では「弱腰だ。シリアに続いてまたも不介入を決めれば、米国がバカにされるぞ」という批判があり、一部マスコミも「及び腰」といった表現でそれに追随している。

 しかし、その論調に、ある国際通の野党中堅議員は怒っている。

「軍事力を断固行使して、世界の警察官として毅然と振る舞うべきだという米国右派の主張が時代錯誤だ。アフガニスタンとイラクであれだけの戦争を13年も続け、それが何の役にも立たなかったから、どちらも内乱が収まらず国家崩壊が続いているわけで、ここでまた米軍が出て行ったら、ますます収拾がつかなくなる。誰が考えたって分かるでしょう。断固とか毅然とかいうマスラオぶりっこの話じゃないんですよ」と。

 少なくともオバマは、地上軍の投入はあり得ないと宣言しているから、象徴的な空爆をするかどうかというところだろう。

「当たり前ですよ。だって、あなた、IAVAの3月の特別白書を読みました?」と同議員が問う。

 IAVAは「全米イラク・アフガン帰還兵」という退役軍人の支援組織だが、その白書は知らなかった。

「9・11以後、2つの戦争に米国は延べ260万人の兵士を派遣し、この3月までに5800人が死亡し、5万2000人が負傷した。負傷しても帰還できればまだマシですが、その人たちを含めて帰還兵の何と60万人が、戦地の恐怖を体験して心的外傷ストレス障害(PTSD)に陥り、その中から推計で1日当たり22人が自殺している。しかも30歳以下の若い人の比率が高い。馬鹿な指導者が感情に任せて大義も戦略もない戦争を発動すると、相手の国だけではなく自分の国も社会崩壊してしまうんですよ。だからオバマはこんな戦争は2度とやりたくない。むやみに軍事力を振り回す国から脱皮しようと腐心している」

 問題は、そのオバマの苦心惨憺(さんたん)を「弱腰」と片付けてしまう米国右翼のシンプル思考が、安倍晋三首相とその周辺にも伝染しつつあることだ。集団的自衛権問題の本質はそこで、中国と戦争をやりたがらないオバマに「日本も一緒にやりますから断固・毅然と戦いましょうよ」と安倍はけしかけているのである。米日の幼稚なマスラオぶりっこが共振を起こすと世の中ロクなことにならない。

【高野孟】

〈たかの・はじめ〉1944年生まれ。「インサイダー」「THEJOURNAL」などを主宰。「沖縄に海兵隊はいらない!」ほか著書多数。

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