The Dark Shadow on US-Korea Relations

Edited by Gillian Palmer

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韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権の、対中傾斜に拍車がかかっている。中国の反対に配慮してか、米国主導のミサイル防衛(MD)システム導入に慎重姿勢を崩さないのだ。中国の習近平国家主席は来月初旬、北朝鮮より先に韓国に訪問して「中韓蜜月」をアピールする。こうしたなか、韓国で元米軍慰安婦が集団訴訟に踏み切った。米国が一連の動きに不信感を深めるのは確実で、在韓米軍の縮小・撤退までをもチラつかせている。

 「国家が『米軍慰安婦制度』を作り、徹底的に管理してきた」

 元米軍慰安婦は、提訴にあたっての声明書でこう指摘した。

 訴訟は、韓国への国家賠償訴訟だが、裁判が進み歴史的事実が公開されれば、朝鮮戦争を戦った米軍兵士の名誉を傷付けることになりかねない。朴大統領が、旧日本軍の慰安婦問題を批判してきたことが、元米軍慰安婦らを刺激し、パンドラの箱を開けたともいえる。

 中国の習主席は来月3、4日、韓国を国賓として初訪問する。朴政権は、旅客船「セウォル号」沈没事故の逆風を挽回するためのチャンスと位置付けるが、米政府は「日米韓協調への逆行」ともいえる動きに警告を発してきた。

 バイデン米副大統領は昨年12月に訪韓した際、「米国の反対側に賭けるのは良い賭けではない」と外交方針の見直しを求めた。オバマ米大統領も今年4月、韓国紙のインタビューに「韓国の安全保障と繁栄の基礎は米国だ」と述べ、米韓同盟を無視するような対中接近を戒めた

ところが、朴氏は恋の病にかかったかのように対中接近を続けており、肝心の米韓同盟にも暗い影を落としている。その象徴が、北朝鮮のミサイルから韓国を守るMDの中核となる地上発射型「高高度防衛ミサイル」(THAAD)問題だ。

 韓国紙・中央日報によると、スカパロッティ米韓連合司令官は「韓国をもう少し成功裏に防御するための方法を考える必要がある」として、韓国のMDにTHAADを組み込むよう要請してきたが、韓国の金寛鎮(キム・グァンジン)国防相は先週18日の国会で「米国で協議中だが、韓国が購入し配備する計画はないことは明確にした」と完全否定したのだ。

 同盟国でありながら、なぜ、かたくなに防衛協力を拒むのか。THAADが高額予算というだけではない。答えのカギは中国にある。

 「朝鮮半島にMDを配備するのは、地域の安定と戦略的均衡に役立たない」

 中国の秦剛報道官は先月28日の記者会見で、韓国へのMD導入について、明確に反対した。

 つまり、THAAD導入に対する韓国の慎重姿勢は、中国の意に沿う形だったといえる。習氏は5月に「第三国を想定した軍事同盟の強化は地域の安全維持のためにならない」とも述べており、日米韓3カ国の防衛協力を切り崩すため、韓国をターゲットにしているのは確実だ。

 習氏の訪韓について、米国は表面上、「重要な節目だ。北朝鮮問題など必要な協力を促進すると信じている」(リッパート次期駐韓米大使)と、平静を装っている。

しかし、田久保忠衛・杏林大名誉教授は「公には反対しないが、米国と緊張関係にある中国に韓国が接近するのは好ましくないと思っている」といい、こう続ける。

 「米国からすれば、同盟国・韓国が中国と接近するのは裏切りだ。米国は内向きになっており、できれば在韓米軍を撤退したいと思っている。韓中がイチャイチャするようなら、何のために韓国を守ってやるのかという話になる」

 田久保氏の指摘を裏付けるように、米政府内からは、韓国の安全保障に対するコミットメント(関与)を疑わせる発言が相次いでいる。

 スカパロッティ氏は今年3月、朝鮮半島有事が発生した場合、「財政問題により来援兵力を迅速に投入することには限界がある」と発言した。対韓外交の窓口となるリッパート氏も今月17日の米上院承認公聴会で、スカパロッティ氏の考えに「同意する」と述べている。

 韓国は、日韓関係改善を求める米国の意向に背を向け、20日には不法占拠する島根県・竹島沖の日本領海で射撃訓練を断行した。そして、米韓離反につながりかねない元米軍慰安婦の集団訴訟が起きた。

 「親中、反日、離米」が外交3原則となりつつある朴氏の耳には、どうやら米国の警告は届いていないようだ。

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