Islamic State: A Desire To Sever the Bonds of Hatred

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<社説>「イスラム国」 憎しみの連鎖を断ちたい2014年9月17日

 国際社会が今、大きな岐路に立っている。憎しみの連鎖を断たなければ、真の解決にはならない。その点を深く認識した上で、適切な解決策を模索したい。

 米英ロやアラブ諸国など約30の国と国際機関の外相らがパリで過激派「イスラム国」対策を協議し、イスラム国と戦うイラク政府に「適切な軍事支援」を提供することで合意した。

 確かに、無抵抗の人質の首を切り、次々に惨殺するイスラム国の残虐性は衝撃的だ。キャメロン英首相が「悪魔のような所業」と非難するのも当然だ。対処が急がれるのは言をまたない。

 だが、軍事行動が果たして真の問題解決になるのだろうか。力の行使を極力控え、外交交渉や経済制裁など非軍事的手段による解決を徹底的に模索すべきだ。

 イスラム国はイラクとシリアにまたがる、英国にも匹敵する広大な領域を支配している。米中央情報局(CIA)によると、戦闘員は推計2万~3万1500人にも上る。クルド人など少数派への迫害も顕著だ。ラスムセン北大西洋条約機構事務総長は「ジェノサイド(民族大量虐殺)にも匹敵する」と述べている。オランド仏大統領が「地球規模の対策が必要だ」と指摘したのもうなずける。

 だがオバマ米大統領が述べたように「中東の心臓部で米軍が地上戦を行えばイスラム過激派を刺激するだけ」である。存在しない大量破壊兵器除去を名目に、12万もの多数の死者を出した揚げ句、治安を破壊して大混乱に至ったイラク戦争の「過ちを繰り返してはならない」(オバマ氏)のも確かだ。

 そこで今、米国は地上軍投入を避け、空爆を展開している。イラクだけでなくシリアでの空爆も辞さない構えだが、それではイラク戦争の二の舞いではないか。あたかも過激派だけへの攻撃のように装うが、過去の戦争を見れば、多数の無辜(むこ)の市民が巻き添えになっているのは間違いない。

 子や親、きょうだいを殺害された住民が、攻撃した国を深く恨むのは自然の成り行きだ。その憎しみが次なる過激派を生む土壌になってしまう。そんな愚を繰り返したくはない。

 国際社会が協調し、イスラム国への資金・物資の流入を徹底的に遮断したい。その上でシリア、イラク両国の治安当局を支援し、当事国による治安回復、犯罪組織撲滅を強く促してほしい。

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