地球温暖化対策について各国の首脳級が討議する気候変動サミットが、ニューヨークの国連本部で開かれた。
温暖化ガスの二大排出国である中国と米国が、2020年以降の温暖化対策の国際協調体制づくりに前向きに関与する姿勢を示した。明るい兆しといえる。
中国の張高麗副首相は温暖化ガス排出の総量抑制に、同国高官として初めて言及した。これまでの「国内総生産(GDP)当たりの削減目標」から踏み込んだ。世界最大の排出国であることを考えれば総量抑制は避けて通れない。
中国は先進国だけが温暖化ガスの削減義務を負うべきだと主張し続けている。産業革命以降の歴史を踏まえれば先進国の責任は免れない。しかし今や世界の4分の1を排出する中国の責任も重い。総量抑制の幅や時期を早期に示し応分の責務を果たすべきだ。
オバマ米大統領は国内の石炭火力発電所に厳しい規制を課すなど、温暖化をもたらす二酸化炭素(CO2)の排出削減に意欲的である。米議会には温暖化対策に消極的な意見が根強く、政治的に難しい制約があるなかで対策を強めている点は評価したい。
ただ、大統領の任期はあと2年ほど。米国として前向きな姿勢が後戻りしないよう、国内の合意をしっかり固めてもらいたい。
米国は1997年の京都議定書合意の際に積極的な役割を果たしたが、国内の意思統一ができず議定書から離脱した。その経緯を世界は忘れていない。
安倍晋三首相は人材育成などで途上国支援を強めることなどを約束したが、肝心のわが国の20年以降の排出削減目標については「できるだけ早期に提出を目指す」と述べるにとどまった。
今回、中国は来年3月末に削減目標を決める方針を示した。日本の対応は国際社会の議論から周回遅れになりつつある。提出期限を明確にしたうえで、目標づくりの国内議論を急ぐべきだ。
世界各地で豪雨や干ばつなど異常気象が増えている。洪水などによる多数の難民の発生や、穀物生産の減少、熱帯病の流行が予測されている。温暖化は世界の安全保障への危機といえる。
それぞれ国内事情はあろうが、待ったなしの対応が求められている。各国首脳は国連で誓った言葉を具体的な政策にし、確実に行動に移すべきである。
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