【エボラ拡大】封じ込め策の強化が要る
2014年10月12日08時13分
このままでは「世界の脅威」になりかねない。そんな懸念が徐々に現実味を帯びてきたのではないか。
西アフリカで流行しているエボラ出血熱の猛威が止まらない。
世界保健機関(WHO)によると、死者が4千人を超えた。わずか1カ月の間にほぼ倍増したことになる。感染者も約8400人に達し、西アフリカの5カ国に加え米国、スペインでも確認された。
WHOは8月末に対策のロードマップ(行程表)を発表し、国際的な支援が本格化したものの、それ以降も封じ込めどころか、むしろ感染拡大は加速している。世界的な流行を食い止めるには国際社会の連携による対策強化を急ぐ必要がある。
行程表では、国際社会に一層の支援を求め、6~9カ月で感染の完全な封じ込めを目指すとしていた。
しかし、現実は思うに任せない。その際、収束に必要な資金は約508億円との試算だったが、間もなく1千億円余りに増額された。支援の広がりを感染拡大が上回る、危機的な状況を示していよう。
厳しい予測も出つつある。
米疾病対策センター(CDC)は、感染のペースが落ちなければ来年1月までに、リベリアとシエラレオネの両国だけで感染者数が最大で140万人に達すると推計した。経済損失も甚大で、来年末までの2年間で約3兆5千億円に上る恐れがあるという。
感染地域では各国の支援があってもなお、病床や医療物資の不足が深刻で、当事国は焦燥感を募らせている。
思い起こされるのはエイズの教訓だろう。実態把握や対策が取られないまま世界中に広がった。エボラも今後数カ月の対策が、封じ込めを実現できるかの鍵となろう。
現在、ワクチンや血清を用いた治療法の研究が急速に進んでいる。それらをどう拡大防止につなげるか。エイズでは貧困国での利益率の低さから、治療薬が有効に活用されなかった。同じ轍(てつ)を踏んではならない。
当面の封じ込め策を強化する一方、長期的な流行のリスクと向かい合う必要もある。感染拡大の背景にある貧困問題だ。生活や医療水準の向上を根気強く後押ししたい。
ウイルスとの闘いでは短期的にも長期的にも、国際社会の英知と連携の在り方が問われている。
Leave a Reply
You must be logged in to post a comment.