日米防衛指針の改定は細部こそ肝心だ
新たな脅威に対応できるよう、日米同盟の姿を描き直そうという狙いは分かる。ただ、肝心の細部がほとんど示されていないため、何を、どう変えるつもりなのか、具体像がほとんど見えない。
日米両政府が発表した防衛協力のための指針(ガイドライン)改定の中間報告は、ひと言でいえばこんな印象だ。目標とする年内の改定まで、あと3カ月たらずしかない。米側との協議を急ぎ、早急に細部を詰めてほしい。
中間報告の大きな特徴は、日米が切れ目なく協力できる体制をめざしていることだ。
現行の指針は日本の状態を、平時、有事、その中間にあたる「周辺事態」の3つに分け、それぞれの協力を定めている。中間報告ではこの分類の垣根を取りはらい、事態がどのように変化しても、日米の協力が途切れないような仕組みをつくることにした。
この路線は理にかなっている。日本は有事ではないが、平時ともいえない、「グレーゾーン」の危機に見舞われる危険が高まっているからだ。緊張が続く尖閣諸島の情勢もその一例だ。サイバー攻撃や大規模テロのように、瞬時にやってくる脅威もある。
日本が集団的自衛権を行使することもあり得るとして、その場合の協力策を新指針に明記することも決めた。当然といえよう。日本が憲法解釈を見直し、集団的自衛権を行使できるようにしたのは、そもそも日米協力を強めることに主眼があった。
だが、気がかりな点も少なくない。日本は集団的自衛権を使い、何を、どこまで担うのか。中間報告では具体策が記されていない。
政府や与党内の調整が難航しているため、米国と踏み込んだ協議ができないという声も聞かれる。だとすれば、本末転倒だ。米側が何を必要としているのかを把握しないまま、国内の議論を進めても机上の空論になりかねない。
グローバルな平和と安全のための日米協力も新たな柱にすえた。輸入原油の多くが通るホルムズ海峡などが戦争中に機雷で封鎖された場合、日本は除去するのか。こんな事例も、米側と擦り合わせておく必要がある。
宇宙やサイバー空間に広がる脅威をめぐる日米協力も待ったなしだ。サイバーでは、企業なども深刻な脅威にさらされている。ぜひ、実効性の高い協力策をまとめてもらいたい。
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